私の世界は君が中心

「名無しー、王子腰痛いから揉んで」
「ん…」

「ねー、腹減った。お菓子と牛乳」
「あ、うん…」

「さっきの任務の報告書、ボスに出して来て」
「う、うんっ……」

「王子疲れた。名無し膝枕」
「っ……」
「早くしろって」


ブッツン。流石に我慢の限界かな。いくら滅多に怒らないからって、ベル調子に乗ってるよね。いい加減にして。
私はベルのメイドでも下僕でもない。恋人の、彼女のはずなのに。そんな事はこれっぽっちも出来てないしそんな空気も生まれない。
私ってさ、何なのかな。ベルから好きって言ってきたくせにお遊びだったの?確かに私も好きだけど、こんなベルが好きなんじゃない。こんなんだったら付き合う前に戻りたいよ。


「おい、王子の言う事聞けねぇ「言い加減にして」…は?」


いつもはベルの言葉を遮ることなんてない私に口をあんぐりと開けて唖然としているベル。何よそのカオ。許さないんだから。


「私は、ベルのメイドなんかじゃない。恋人なのに。なんでこんな…どうせ遊びだったんでしょう?…もう別れよう。我慢出来ないの」


冷たい視線を送りながらそう伝え、部屋を後にしようと歩き出した私の手を強く掴まれる。


「痛い、離してよ」
「嫌だ」
「何で…」
「…だって王子は好きだし」


好きな人にあんな事するの?分かんないよ、ベルが。ずっと我慢してきたのに。
初めは可愛い我が儘だと、ただ甘えたいだけなんだと思ってた。でも日に日に少しずつ酷くなっていくし、私の事は何かを頼む以外ほったらかし。
…付き合う前は、一緒にお話しして、一緒に何処かに出掛けて、一緒にお茶飲んでたのに。付き合ってからだよこんなの。言うこと聞くんなら誰でもいいんでしょう?ベルだったら一杯いると思うけどね。もっと可愛くて従順な子にしなよ。私みたいな可愛くもなくて、失敗ばかりのやつなんかじゃなくてさ。


「…嘘だ。好きなら、こんなことしないよ」
「………はぁ」


私の言葉から少し間が空いて聞こえた溜め息。…なによ、溜め息吐きたいのはこっちなのに。キッと睨みつけるようにベルを見つめれば、思いっきり腕を引っ張られた。勿論急で体勢を保つことの出来なかった私はベルの腕の中にダイブした訳ですが。
ぎゅうぎゅうと苦しいくらいに抱き しめられて、少し離れようと胸板を押した手もベルに掴まれてしまった。


「こんなに近くにいんのに何で分かんねぇんだよ…」
「へ………」


ぽつりと、消えてしまいそうな程小さな声で発せられた言葉。ベルじゃないみたい。なんだか消えてしまいそうで、強く抱きしめ返した。
それにしても、近くにいて私が分かってないことって一体…?あんまり思い当たることもないんだけどなぁ…。


「… 名無しのこと、本当に大切じゃなかったら殺してる」
「うん……」
「名無しだから、何か失敗しても殺してねーの。普通のやつだったら直ぐに殺すし」
「………」
「…これでも伝わんねえ?」


確かに、そうかもね。ベルは嫌いな人を部屋に入れるほど優しくもないし、気にいらないものは全部切り捨てる。好きじゃなかったら抱きしめたりもしない。今みたいに。
…悪かったのは、こんなに近くにいて気付かなかった私のせいなのかな。でもベルにももっと一杯言って欲しいっていう気持ちもあるんだけどね。

でもどうこう言ったって、


「ううん、伝わったよ」


私の中では、


「でも、ベルももう少し言ってくれると嬉しいな?」


結局君が、


「シシッ、分かった」



中心なんです。



(結局のところ、)
(お互いにベタ惚れ)


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