折りたたまれた紙
「………武藤先輩!!!!!??」
今、俺の上に武藤先輩がいる。すみません説明不足でした。
俺が上を向くと、家のベランダから俺を見ている武藤先輩がいた。
「そうだよー。武藤だよー」
一瞬、幻覚かと思った。でも先輩はにこにこしながら手を軽く振っていた。幻覚なんかじゃない。
「もー何なんですか先輩ー。めちゃくちゃビックリしたんですけどー!!」
「あ、ごめんごめん…。別に悪気はないの。ただ目の前通ってたから…話しかけない方が良かったかな?」
その真逆だ。
むしろ先輩から声かけてくれるなんて思っても見なかったから超嬉しい。おっと、危ね。顔がにやける。
「いえ、別に大丈夫ですよ。…てゆーかここ、先輩の家ですか?」
「うん、そうだよー。狩屋君は?」
「俺は…すぐそこです」
「へぇ、そうなんだ!それじゃぁ結構近いね!!…あ、そうだ。ちょっと待っててね」
え、先輩の家…え。え!? …俺んちと近い。マジか。
先輩はベランダから部屋に戻り、俺は先輩に言われた通りその場で待っていると、すぐ玄関のドアがガチャっと開いてひょこっと先輩が出てきた。
「…立ち話もなんだし…中入る?」
「え…?」
「あ、嫌なら別に外でもいいんだけどね…?」
先輩は玄関の近くで首を傾げて言った。
ヤバい、可愛すぎる先輩!!! 神童先輩が羨まし過ぎる…!!!
「…いいんですか?入っても…」
だって、神童先輩と付き合ってんのに、他の男なんか家に入れていいの?
「うん。」
いいんだ!!!??
まぁ、先輩が良いなら……全力で入りたい。
「…じゃあ、少しだけ…お邪魔させてもらってもいいですか?」
「どうぞ!汚いけど許してね」
そう言ってにこっと笑って玄関の扉を開ける先輩を見てかぁ、と顔が熱くなった。俺はお邪魔します、と一言言って家に上がる。何か物凄く緊張してきた。
…てゆーか。
「部屋きれいじゃないですか…」
「そうかなぁ……あ、そこに座ってて。狩屋君オレンジジュース飲める?」
「はい、飲めますよ。…てか、わざわざすみません…」
「いいよ別に!気にしないで!!」
先輩はコップにオレンジジュースを注ぐと俺の座っている前のテーブルに置いた。
「あ、ありがとうございます」
「いいえ〜」
「…先輩の両親って、今家にいませんけど…お仕事ですか?」
俺のふと思った疑問を先輩に聞くと、先輩は少し悲しそうな顔をした。だけどすぐににこっと笑う。
「うん。2人ともいつも深夜くらいに帰って来るからね〜、だから一緒に暮らしてるんだけどあまり出会わないかな…。…あ、そう言えばさっき何か怒ってなかった?…霧野君に」
「え?あぁ…たまたま出くわして、ちょっとスポーツショップ行くからお前もついて来いって無理矢理連れて行かされたんで…」
俺はさっきのことを思い出しながら苦笑する。ちなみに顔には出さないけど思い出したせいでイラッとした。あの女顔…
「(へぇ…蘭丸がねぇ…)…そっか。それで何か奢らせるって言ってたんだね」
「…聞えてたんですか全部。…でも、霧野先輩のことなんできっと奢ってくれませんよー」
そう言うと、そうかなぁ…と言いながら自分用に入れたジュースを1口飲む。
「んー…あ、狩屋君、甘いもの好き?」
その問いかけに疑問を持ちながらも好きですよと答える。
「じゃぁ、駅前に新しくケーキ屋さん出来たのも知ってたりす…」
「勿論、知ってます!」
「…そ、そっか!」
あ、俺ってばついケーキ大好きだから…あ、でも今はケーキより先輩の方が…じゃなくて!!!
先輩は「じゃあ問題ないね」と呟くと、テーブルの上に置いていたケータイを持ってパカッと開いた。そしてカチカチとボタンを押して何かを打っている。
「…先輩?何してるんですか?」
「んー?霧野君にメールー。」
霧野先輩に…?と聞けば、うんと即答。何で霧野先輩に…?と俺の頭の中では疑問がぐるぐる。
一旦、落ち着かせる為に俺はコップを手に取りオレンジジュースを飲んだ。
「…ふぅ。…霧野君にね、明日駅前にあるケーキ屋さんのケーキが食べたいなぁ〜って送った!!」
「えっ!!?」
武藤先輩はにこーと笑って「丁度私も甘いものが食べたいな〜って思ってたから良かった〜」と言っている。てゆーか、メール内容めっちゃ可愛んだけどこの人。
「でもまだ決まったわけじゃないですよね?OKもらってないのに…」
「んー大丈夫!絶対OKしてくれるよー」
「そんな根拠はどこから…。何で言い切れるんですか?」
「霧野君だから!!!」
どんな根拠だよ!!!そんなどや顔で言われても…ただ可愛いだけですって。心の中でそう素早くツッコミを入れていると、先輩のケータイの着信音が鳴った。
先輩はケータイを取るとしばらくして、笑ってOKのサインを俺に見せた。
「いいよって!!!」
嘘だろ…?
「狩屋君も一緒に行くって言っとくね!あ、明日空いてる…?」
「あ…空いてますけど…」
じゃぁ大丈夫だね!と言って先輩は笑う。
…ってことは?明日も先輩と話せるってことだよな…!!?
「明日はケーキ奢ってもらうぞ〜!!」
「…その霧野先輩にケーキ奢ってもらえるって言い切れるのは…」
「霧野君だから!!!」
ですよね。
まぁ、可愛いからいいけど…って、もうこんな時間か…。
「あの、俺そろそろ失礼します」
「あっ、ごめんねこんな時間まで…!!」
「いえ、楽しかったですよ。ありがとうございました!」
俺は玄関まで行って靴をはきながら答える。先輩は慌てながら玄関まで付いてきた。
「じゃぁ、また明日」
俺はそう言って玄関を出る。
「あ、狩屋君待って!!」
玄関から少し顔を出して俺を呼び止める武藤先輩。すると、一旦先輩は家に戻り、しばらくしてから外に出てきた。
「…はい!待たせてごめんね!! じゃあまた明日!」
そう言いながら、小さい白い紙を渡すと小走りで家の中に戻って行った。
……何だったんだ?紙…何だろ。そう思いながら折り畳まれた紙を広げて見てみると。そこには、先輩のアドレスらしき文字が書かれてあった。
「(…や、やったぁぁ!!!)」
俺は心の中で叫びまくる。
先輩のアドレス!! てゆーか字きれい!!この紙無くさないように机の引き出しの中に入れて取って置こう。
俺はそう思いながらアドレスの書いてある紙を握り締めて急いで家に帰った。
「マサキお帰りー。夕飯もう出来てるから早く食べなよー」
「分かってる!!」
家に帰ると、ヒロトさんの言葉に返事をして自分の部屋に駆け込む。そしてすぐにベッドに寝転がり、ケータイを開くと持っていた紙を取ってケータイにアドレスを入力した。
…よし、メールだメール。
To 武藤先輩
───────────────
こんばんは!狩屋マサキです
アドレス教えてくれてありがとうございました!!
登録お願いします!!
…と、こんな感じでいいかな。俺は念入りに何度も見返して送信ボタンを押した。
何だか物凄くドキドキしてきた。あんな文章で良かったんだろうか。そう悩んでいると、ケータイの着信音が鳴る。ディスプレイを見ると、武藤先輩からの…って返信速っ!!?
From 武藤先輩
───────────────
こんばんは(*・ω・)ノ
登録ありがとう!
これからよろしくね!!(≧艸≦)
……可愛いし。絵文字がたくさんだ。それに比べて俺は…。
とりあえずケータイを持ってない手でベッドを殴る。えっと、返信返信。
To 武藤先輩
───────────────
よろしくお願いします!!(*゚▽゚)
今日は楽しかったです。お邪魔しました!!
メールを送ると、また数分もせずに返信がくる。
「マサキー!ご飯ー!」
「分かった!今行く!!」
下からヒロトさんの叫ぶ声が聞え、俺は部屋のドアを少しだけ開けて叫んで返事をした。その後、またドアを閉めてケータイの画面を見る。
From 武藤先輩
───────────────
いえいえ、私こそ今日は楽しかったよ!
ありがとう♪また遊びに来てね(ゝω∂)v
To 武藤先輩
───────────────
先輩がいいなら是非!
…あ、夕飯食べてくるんで…すみません(汗)
今日はありがとうございました!
お休みなさいm(_ _)m
From 武藤先輩
───────────────
あ、こんな時間までごめんね…(´・ω・`)
明日は、雷門中の正門に集合だって!楽しみだね
お休み、また明日(*´∀`)ノシ
俺は先輩からの返信を確認する。
武藤先輩とメール。俺にとって、これからの楽しみだ。
そう思いながら、ケータイを机に置いて急いで着替え始める。そして、夕飯を食べるべく、下へ降りた。
明日が楽しみだ。
←
→
TOP
list
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -