03
「だーかーらー! ホントにやばいんだってよー!」
わたし的にはずいぶん充実した夏休みを終え、始業式を迎え、学校に登校せざるをえなくなると、自然と現実を直視することになる。
休み明け、学力を測るための試験で散々な結果を叩き出してしまった。無論こちらとしては妥当な点数だったが、担任から大目玉を食らう羽目になった。
少し思い返してみてほしい。まだ夏休み序盤のことだ。休暇前の試験で赤点ばかりだったので、自分はもちろん補講組だった。もはや補習の常連であるわたしの顔を確認するや否や、深い溜め息ついてたのを担任はもうお忘れなのだろうか。
再試験も再々試験も通らず、唸り声を上げる担任がとった方法は、授業中にとったノートをレポートとしてまとめることだった。
それを提出してようやく合格したときの嬉しさといったら…いや、疲れの方が大きい。
「もうフォローしてやれねーよ!? ホント知らないよ!?」
唾飛ばして話す担任にほんのり鳥肌が立ったが、そんなことは言える雰囲気でなかったのであくまで無表情を貫いた。
こんな調子だが留年させまいと、無事に卒業させようとしてくれるのは有難い。だけど何度でも言ってやる。どうもやる気が出ないのだ。現実味がない、というのがいちばんの原因に違いない。
結局こってり絞られ、たくさんの課題と白紙の進路調査票を手渡された。手に持っているだけで気分が滅入る。
紙束をちらちら見ていたら授業なんか受ける気にならず、教室へと戻ると見せかけたその足で屋上へ向かった。
人の気配がないのを確認し、屋上へ踏み入る。空は真っ青で、文句のつけようがないぐらいの快晴だった。
プリントの山をコンクリートの上に置き、その側へ、仰向けで寝転がる。もう9月だというのに照り付ける太陽は、真夏のそれとなんの遜色もないように思えた。失明するんじゃないかと思うくらいに眩しかった。
耐えかねて瞼を閉じれば、優しく微笑むタケルの顔が浮かぶ。画面を覗き込めばいつだって笑って、彼は優しい言葉をかけてくれる。心配してくれる。わたしを世界一の姫のように扱ってくれる。
それもそのはず。だってわたしは、何でもこなせてとびきり可愛い容姿を持っている。
あの、画面の奥では。
突き刺さる現実が痛い。実際はお姫様でも有力なキーマンでもなく、ただの村人Aにもなれない自分だ。
バサバサバサ、
自分の毛先が頬を掠めるほどの風が吹いて、そばに置いたはずのプリントが飛んでいく音がする。ハッとして目を開くと、
「…えっ!?」
そこに、イケメンのどアップがあった。
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