コズミックガール | ナノ

オープニング

 イヤフォンから流れる音楽とその歌詞に、自分の心がリンクする。
 青春の醍醐味ともいえる甘酸っぱい恋、それにフォーカスを当てたこの曲は巷で人気のアニソンだ。

 ふと、先日読んだ少女漫画を思い出す。内容は、すれ違う女性の目を釘付けにするほど顔が良い男と、完全に喪な女のシンデレラストーリーだった。
 登場キャラの設定は高校生。特にお相手の男性がハイレベルだった。顔が良く、背も高く、スタイルも良し。真面目で誠実で、近い未来に警察学校に進学し将来は公務員。その容姿を鼻にかけるわけでもなく、浮いた噂もない。勉学に部活動に勤しむ彼は、先生方の評価もずいぶんと高い完璧超人だったかな。ーーーなんて、

「どこの恋愛シミュレーションだよ」

 思わず口から本音が飛び出た。ついでに溜め息も出た。そんなハイスペックな人、漫画かゲーム画面の中でしか見たことない。
 曲にも漫画にもとても共感できる。だけど現実は、アニメやゲーム関連の物で溢れた自室で、くたびれた部屋着に見を包み、ベッドの上に寝転がっている。片耳にイヤフォンを突っ込み、手にはゲーム。その画面の中の、爽やかな笑顔で卒倒しそうなほど甘い言葉を囁く男性に、日々にやついているわたし。

 ゲームの中でのわたしは超美少女なヒロインで、数多くのイケメンが自分に夢中で仕方ないのに、実際はどうだ。
 コミュニケーション能力に難ありで女友達すら危うい。顔、体型の偏差値は平均だと思いたいが、そんな平均点女、むしろ平均点以下女があんなラブストーリーを繰り広げられるわけがない。最近ようやくリアルに目を向けてみたが、成績最悪で留年目前だということに気がついた。

 人生、詰んだなこりゃ。



 ゲームのストーリーを進めていると、ある分岐点に差し掛かった。意中の彼は"今夜は帰さないよ"と微笑んでいる。
 選択肢は"断る"、"うなずく"、"挑戦的に笑う"…うーん、燃え上がるのは"挑戦的に笑う"だな。

 ふと思い立って、物語の分岐点で普段なら選ばない"断る"ボタンを押してみた。「僕、無理やりはしない主義なんだ」とか言って爽やかな彼に振られた。

 どいつもこいつもハードモードだぜ。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -