第二話 1-3

 はあーあ。雲ひとつない快晴の下で、似つかわしくない深い溜め息をひとつ。
 自分は会う予定になっている友人を待っていたが、その時刻になっても彼女は現れない。恐らく寝坊だ。ときどきそういうことをしてしまう奴なので"またか"と思いながら、そのまま佇むことを選択して空を眺める。

「お昼行こ! そのあと買い物しよ! ストレス発散!!」

 目を血走らせてそう言う彼女は最近、彼氏に振られたらしい。消失した存在を友情で埋めることにしたらしく、つい先日慰め会と称した昼食会に参加したところだが、そう間を空けずに次のお誘いが来た。
 めんどくせ…と思うのが正直なところだったが、傷心中の彼女に次の相手ができるまでだと割り切った。また適当なのを見繕ってすぐにお付き合いを始めるだろうと、恋愛体質な彼女の生態を知っているのもある。
 だから待ち合わせ場所である建物の、側壁にべったりもたれて溜め息をつく。

 はあーあ。ーーーでもこれは待ちぼうけを食らっていることに対してではない。最近、時間が空くとどうしても考えてしまうことがあるのだ。

 どうやらカカシさんに彼女ができたらしい。あの見目麗しいお人なら、女の影のひとつやふたつあり得ることだとはわかっている。それでも、それでもだ。

 あの人の隣にいるべきなのはイルカじゃない?



 14歳のときに開花させてしまった趣向は成人した今でも潜むことも変わることもなく、自分の恋や男女のそれよりも興味を示してしまうものへと成長していた。恐らく友人同士であろう男性方が肩を組んでいるところを見た日にゃあ、もう。ほくそ笑むどころかニヤニヤが止まらない。
 それがあの男の子が好き、格好良いと色めき立つ友人たちとはどこかズレているということを早めに理解したので、誰に言うわけでもなく心の中だけで温めるものとなっている。

 それで正解だった。実はお仲間を発見したと感じたことがあったのだが、その子はぽろりと心情を吐露してしまい、周りから大バッシングを受けた。
 ものすごい剣幕にフォローもいれられず、一歩離れたところで関わりを断つという、負け犬根性さを痛感してしまったのでこれは一切表に出すまいと誓った。

 と、こんな山あり谷ありの萌えライフを密かに謳歌する中で、忍者としてもほそぼそ頑張っていた。そして下忍から中忍に昇格したあたりで衝撃を受けた。少しばかり関わることのある、はたけカカシさんという存在に冗談抜きで感じた。

 この人は、神である。

 整った容姿をひけらかすわけでないその奥ゆかしさにもどかしくなりつつも、それを歪めるのが男性であればいい。何よりも先にそう思ってしまったことに自分のサガはもうダメだと笑いそうになった。
 そうしてカカシさんの裏側を勝手に想像し、妄想し、浸っていた折にイルカと会話する笑顔を見たらもう…、…ふっ。

 目当ての人物は未だに来ず、ぼんやりとしていたから意識は内側へと閉じ籠っていく。そして、いつものように自分の理想を作り上げていく。

prev next
back


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -