その目が優しさで満ちるとき 04
「暑ィ」
そう言って着ていたシャツを脱ぎ捨てている。その下に潜んでいたのは想像していたよりずっと引き締まった、鍛え上げられた体で見惚れてしまった。思わず指を這わすとくすぐったそうに身をよじる。
隆起した筋肉は固く、温かい。くっついていたくなって背中に腕を回して引き寄せると同じように抱きしめられ、のしかかる重みを感じた。
頬を寄せると、脈打つ心臓の音が聞こえた。その規則的な音を聞いていると妙に安心した。
くっついていると否応なしに下腹部に主張したものが当たる。無意識なのだろうか、時折擦り付けられるそれは、もうずいぶんと硬度が増している。
するりとスカートの裾から侵入してきた無骨な手が、膝から這わされて上へと上がってくる。布地に到達したら食い込むそれに指を掛け、素肌を直接触られた。お尻の丸みをしばらく確認したあと、もう片方の手がスカートの留金にかかる。そのままファスナーを下げたらすぐにずり下ろされた。
上体を起こした土方くんは上から下までこちらを眺めた。靴下の先をつまんでするりと外されると、身につけているものが減っていく。
残るはショーツ一枚となった。そこに手をかけた土方くんの上下した喉仏に目がいく。瞼をおろしてひとつ、小さく息をついている。
「…いいか?」
一拍置かれると羞恥心が戻ってきたけどやめられる理由もない。お尻を浮かしたのを返事にして、最後が脱がされてしまうのを目で追う。
一糸纏わぬ姿を見られるのはやはり恥ずかしくてごろりと寝返りを打つ。背中を伝うものを感じたら、後ろから強く抱きしめられた。
「なんか、想像してたのと違ェ」
どういうことだろう。そう不安に思うこちらの気持ちを感じ取ったのか「悪い意味じゃなくて」とすぐに続きが飛んできた。
「好きなやつの裸って恥ずかしくて直視できねえかと思ってたんだけどよ、そんなことなかった」
肩甲骨のあたりに柔らかいものが触れ、ちゅ、と音が響くのにキスされたのがわかる。
「逆だった、ずっと見てられる。…綺麗だ、だからこっち向いてくれよ」
そんな殺し文句を言われちゃ向かないわけにはいかない。けれど自分でそうする前に大きな手で急かすように肩を掴まれて、もうすでに後ろに引かれていた。
力で敵うはずもなく回転したら、真剣な表情をしているのが見れた。だけど頬は赤い。そのギャップに心臓が違う音を立てる。
何度目かのキスをされて、彼の指先がくびれから骨盤へ向けて滑る。くすぐったさとは違う、ぞくりとしたものが背筋に走り腰が引けた。
「逃げんなよ」
低い声は容赦なく、動きを止められる。下腹部を撫でた手が内ももに触れ、下へと降りる。遠慮がちに触れられて初めて、自分のそこが濡れていることに気がづいた。
ぬるぬると上下させて擦られたかと思うと、すぐにそれが離れていく。「濡れてる」と呟くように言った彼はその人差し指と中指をじっと見つめた。
「ちゃんと気持ちよかったか?」
言葉でそう聞かれると顔に熱が集まるのを感じる。聞かなくても体は正直に表しているのに、意地悪な人だ。
おもむろに人の上から退いた土方くんは、わたしの足元へと腰を下ろした。そして、あろうことか両膝の裏を手で押し上げられてしまった。
その眼前で足を大きく開いてしまいそうになり、慌てて閉じようとするが食い込む指先がそれを許さない。
「七瀬の全部、俺に見せろって」
余裕のない顔でそう言われると降参するしかなかった。優しく、恥部に触れるそれは確かに土方くんの指先で、頭が沸騰しそうになる。
「どこ気持ちいいかおしえろよ」
そんなの言えるわけがない。今触られているだけで精一杯なのにそれをさらに口頭でなんて、情事が終わったあと顔も合わせられないような案件だ。だから首を横に振って見せた。
「…言わねえなら全部触ってやる」
下から上へそっと指をなぞらせるその動きに腰が引ける。毛に隠れるようにある突起を指先が掠めたら、体がとぴくりと反応してしまった。
じっと見られているのにそれを見落とされるわけもなく、その部分をトントンと優しくつつかれた。
「ここか?」
触れるか触れないかの微妙な加減で撫で回される。痛くないように優しく触れてくれているだけなのかもしれないが、焦らされているようなその触り方に腰がうねる。
乳首にもされたように、摘ままれたり少し押しつぶすように撫でられたりと絶えず来る刺激に声が漏れる。ーーー気持ちいい。土方くんの触れるそこにばかり意識がいく。
「…気持ちいいか?」
どうしてそんなこと聞くのだろう。濡れて、声が聞こえるだけじゃダメなのだろうか。一回だけ、小さく呟くように肯定したら彼は嬉しそうに目を細めた。
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