その目が弱みを握るとき 02
 突然のことに驚いて、思わず口を開けてしまったのは失敗だった。待ってましたと言わんばかりに生暖かい舌が侵入してきたからだ。それは歯列をなぞって、奥で縮こまるわたしの舌を見つけるとゆっくりと絡め取る。
 ふう、ふう、と荒い呼吸をしながら何度か逃亡を試みるも、後頭部を押さえられちゃあどうにもならない。顔を離すことができずに貪られていると酸素が少なくなってきて頭がふわふわしてきた。
 大きく息を吸い込みたくて口を開けるも、唇が覆いかぶさるばかり。呼吸困難に気づいてほしくて胸を押すもびくともしなかった。

 合間にちゅくちゅくとやらしい音が鳴るのはわざとなんだと思う。土方くんにそうされようとこんな音は鳴らなかったから。しばらくそんな卑猥な水音を聞かされて耳がおかしくなりそうだった。
 そうしてされるがままになっていると、ようやく離れていく。ハア、とすぐさま酸素を供給した。

「…やべ、先生ちょっと我慢できねーわ」

 控えめに息を切らした、至近距離で見るその表情は色っぽくて心臓がうるさくなったけど、我に返ったのはすぐだった。ーーーこの人が我慢できなくなったのは何か? 熱を含んだ瞳はわたしを捉えている。昨日今日とそれを嫌というほど見てきた。何を求めているのかはすぐにわかる。

 後退したらすぐソファの終わりがきて、肘置きに腰がぶつかった。立ち上がる前に腕を掴まれる。未だに消えない跡に唇を這わされるとぞくりとしたものが背中に走る。

「ななこちゃんは? したい?」

 この人の声は反則だと思った。耳から侵されていくみたい。

 探るような手つきで頬を撫でられる。拒絶されないか確かめているようだった。ほんの少しの躊躇いが命取りであるということは先ほどで学んだはずだったけど、また名前を呼ばれたら意識を絡め取られた。その瞬間にはもう、目の前に顔があってまた舌を絡められる。

「もう抵抗しねーの?」

 耳元で響く低音は、体に力を入らなくさせた。するすると滑る手は簡単にセーラー服の裾から手が侵入してきて、優しい手つきで胸を揉まれる。
 無意識に開いた唇を、角度を変えて何度も塞がれた。そうされながら、ぷちぷちと身表のボタンが取られていく。キャミソールの上から片手で器用にホックを外され、胸の上までたくし上げられた。

 外気に触れた乳首は触れられてもないのに主張していた。指先で押しつぶされると否応なしに小さく体を震わせてしまう。
 にやりと緩んだ口元は突起をそっと口に含んだ。ちゅ、とまた音が鳴る。優しく吸われたりなんかしたら、もう、

「まァ、無理やりは趣味じゃねーしいいんだけど」

 自分の体は恥ずかしさを覚えるくらい正直だった。舌で転がされる度にビクビクと跳ねてしまう。

 ね、ななこちゃん。また名前を呼ばれて、自然と閉じてしまっていた瞼を持ち上げる。顔を俯かせていたせいで、胸元に寄せられている唇を直視してしまった。そのレンズ越しに熱を帯びた眼差しと視線が交わると、早い鼓動が不規則に鳴った。

「眼鏡、外してくんね?」

 両手、塞がってるからさァ。そう言う言葉通り、両手で乳房を包み込まれた。低い声に誘い込まれる。震える手で銀縁を掴んで取り払うと、口角を持ち上げた先生に今度は触れるだけのキスをされた。

「はい、よくできました」

 首筋にくちびるを這わされ、かかる吐息にぶるりと身震いする。甘い刺激に体の奥を疼かされて、思わず膝をすり合わせたらまた、耳元で囁かれる。

「触ってほしいんだろ」

 太ももに手を這わせて、スカートをずり上げた指がショーツのゴムにかかった。

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