その目が余裕をなくすとき Last
 どうすれば気持ちいいかなんて今までのことでわかってる。背中に触れる温もりに自重を預けて、夢中で触った。どんどん追い詰められていく。自分でそうしていく。

 ハァ、と耳元で熱い息遣いが聞こえた。腰を引きつけられて硬いものが当たる。耳の裏を尖らせた舌先で舐められると合間に変な声が出てしまった。

 今さらながらホックが外れて、その下から手が差し入れられた。形が変わるほど揉まれたかと思うと、指が次第に中心に寄っていき乳首をつねられる。それも昇天へと登りつめるためのスパイスになった。
 そこに集中してしまっていたら、うなじをがぶりと噛まれる。少し痛いぐらいだったのに何故か口からは嬌声が漏れた。

「つーか勝手にイクんじゃねーや。そのときはちゃあんと報告してもらわねーと」

 そんなセリフに彼のにやついた表情が簡単に思い出される。

 イクなんて、そんな波はもうすぐそこまでやってきていた。焦らすことなんてせずにせっせと触っていたから、もうくちゅくちゅと卑猥な水音がしっかり聞こえるぐらいだし、こんな状況下で興奮は最大まできている。

 返事をしないでいたら沖田くんの手が割って入ってきた。やめさせられて切なさを覚えてしまう。

「なに、クリ派? 中は、…まあ童貞相手じゃそこまで無理か」

 ぬるりと遠慮なく挿入される指はそのスポットをピンポイントに擦り上げた。奥から湧き上がるような、また違った快感に思わずのけぞってしまう。

 チュ、チュ、と首元から音がする。そんな優しいことするんだ、とかぼやけた頭の隅で思った。



「触られるのそんなに嬉しいかィ」

 気がおかしくなりそうだ。ぐちぐち音を立てるそこが熱くてたまらない。なのに中じゃイケない。
 恥ずかしげもなく声を出して、足を広げて、沖田くんの手をそこに押し付けるように腰を動かして、快感に浸ってるのにその最後の壁は超えられない。
 わざと、なんだと思う。先ほどからもう、すっかり敏感になったそれを触ってもらえないあたり、まだ焦らされているのだと思う。

「こんな濡らしてぐちゃぐちゃになってんのになァ、しんどいよなァ」

 引き抜かれて眼前にて見せつけられる、ぬらぬら光る沖田くんの指。そんなときハァ、と息をついたのは彼のほうだったと思う。
 興奮してくれているなら、どうして抜いちゃうの? どうしてもっと触ってくれないの? 叶えてもらえない欲求が渦巻く。もう、楽になりたいのに。



 首を後ろに枝垂れさせて、密着したままの沖田くんを振り返る。唇が触れそうなほど近くに顔があったけど、それに動揺しないほど熱に浮かされていた。

 綺麗な赤い瞳がこちらを捉えている。



「…ねえ、指、だけなの?」

 思わずねだってしまった。

 だってそっちだってずいぶんと硬くしたそれを、これまたずいぶん前から押し付けてきている。それなら別に、一緒に楽になってもいいじゃない。

 そんなふうに欲張られるなんて思っていなかったのだろうか。見たことのない表情を浮かべてから、目が伏せられる。ハア、と何度か聞いた溜め息がまた吐き出された。

「…っ、あーやべ、久しぶりにキた」

 力の入らない体は足をどけられてポン、と肩を押されたら簡単に揺れた。べしゃ、と背中から冷たい床に倒れたら受け身を取らなかったせいで頭を打ってしまってクラクラした。

 そんなこと気にも留めない沖田くんは不機嫌そうに髪を掻き上げている。ファスナーを下ろす音がして、片足を持ち上げられたかと思うと彼の肩に引っ掛けられた。

「やっぱ土方の女ってのが最高にムカつきまさァ」

 体に重みが乗る。入り口に熱いモノが当たって、それは一気に侵入してきた。

 あんな余裕たっぷりだった沖田くんは眉を寄せている。みんなが抱かれたいと思うその人の下で、一定のリズムで繰り返される律動に合わせて喘ぐ。「エロい顔」と言うその人こそ赤の他人に生唾を飲ませるほどえっちい顔をしていた。

 温もりが欲しくなって手を伸ばしたら、拒まれることもなく顔に触れられた。つるりとした肌はキメが細かい。
 変わらず不機嫌そうな沖田くんに手のひらを噛まれた。驚いて離したら指が絡まってコンクリートに押し付けられる。擦れて痛かったけど、握り締められたからふりほどけなかった。

 沖田くんの息も上がってる。それをしばらく聞いていたらどこか冷静な自分が戻ってきた。慣らされた体だったけど、彼のそれは良いところに当たらない。ーーー惜しいなあ、今回もイケないのかなあ。気持ちいいと思ったけど、演技するハメになるのかなあ。

 目を瞑っていたら、呻く声が聞こえた。ハァ、ハァ、と肩で息をして、のしかかってくる沖田くんは言う。

「お前、土方が初めてとか嘘だろ」

 青い空を見上げながら、わたしは返事をしなかった。

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