その目が余裕をなくすとき 02
自分の口からは短く悲鳴が漏れた。咄嗟に前を押さえるも、腕をギリギリと強い力で握り上げられる。
「…どうしてって顔、してやす」
トレードマークとも言える江戸っ子口調は優しい声色で響いた。それが異様に聞こえて、耳を塞ぎたくなる。見上げると今度は綺麗な笑みを浮かべていた。
これはそんな笑顔でできることなの? そう聞きたくともあっという間に組み敷かれてしまう。
床から制服を伝った、ひんやりと冷たさを感じる。暴れる隙もなく両手首をなんなく頭上で固定され、その冷たさへと押し付けられた。お腹の上に跨がられているせいで足を動かしても意味はない。
その体勢でまたじいっと見つめられた。沖田くんは一体何を知ろうとしているのか。先ほど呟くように言ったそれが答えなんだろうが、なんでこうも実力行使されなきゃいけないんだろう。その探るような視線は自分の胸元で止まる。
「意外とあるな」
キャミソールの裾をスカートから引っ張り出したら露わになったそこに遠慮なく手が伸びる。
「もっと抵抗してもいいんですぜ? その方が燃えるし」
悲鳴を上げようとも、今はもう下校時間だ。校内は人がまばらだし、第一こんなところで声を上げてもたかが知れている。動けない今、荒っぽく膨らみに触れるそれを受け入れるしかないのだ。それをわかっていながら抵抗しろとは…後半の言葉通りただ興奮したいだけなのか。
布越しなんか微塵も興味ないようでさっさとブラをずり上げられた。その綺麗な顔が近づいてきたかと思うと、なんの迷いもなく乳首を口に含まれた。
舌で転がされると自分の意志とは関係なしに反応してしまう。せめて声は出すまいと口を真一文字に結んだ。
甘い刺激に耐えながら、どうしてこんな状況になってしまったのかと悔やむ。こんなことをしたと、もし土方くんにバレれば波乱が起きるのは間違いない。誰だってそれぐらいはわかるはず。それをわかっていながら人の彼女を押し倒すその心理がわからない。
アイツはやばい。いつしか、土方くんが言っていた言葉が思い出される。
「無抵抗かよおもしろくねェ。…あ、いいのみっけ」
カチャカチャと金属音が鳴る。閉じてしまっていた瞼をうっすら開けると、ウエスト部の金具をまさぐっているのが見えた。しゅるりと抜き取って、合皮でできたそれで両手首をきつく縛り上げられる。食い込んだその痛みに思わず涙が滲む。
「痕、残ると面白ェのに」
ニヤッと口の端を上げているのを見、唇を噛むことしかできない。
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