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 任務を終えて報告書を提出し、館内を歩いていたら七瀬に出会った。彼女もまたオレと同じことをし終えたあとらしい。
 特に用事もないけど連れ立って歩く。向かう出口は一緒だからだ。

 階段を降りていたら、段差を踏みしめる衝撃でさらさら揺れる髪に目がいった。カラスの濡れ羽みたいな色をして、絹のように一本一本なめらかなそれに。
 指通せばきっとなんの引っ掛かりもなく、根本から毛先まですり抜けていくだろう。

「…なに?」

 そんなことを考えていたらつい腕を伸ばしてしまった。元々肩を並べて歩いていたので、触れてしまうのは簡単だった。

「ごめん、ごめん。あんまりにも綺麗だったからつい」
「そう? ありがとう」

 こちらの唐突な言動をさらりとかわし、あまつさえお礼まで言えてしまうその余裕に感服した。人が違えば気持ち悪がられていたかもしれない。頭ひとつ分下で彼女は笑っている。

「怒らないんだ」
「褒めてくれてるのに?」
「違うよ、触られたことに。男から急にあんなことされたら嫌じゃない?」
「そうかなあ? でもカカシなら嫌じゃないよ、絶対」

 絶対。その言葉がやけに引っかかった。

「じゃあ、これは?」

 腕を引いて歩くのをやめさせた。キョトンとした表情でこちらを見てくる。身をかがめて距離をグッと縮めた。
 自分は口元をマスクで覆っている。布越しに唇を合わせて、相手の様子を伺った。先ほどよりも少し目を見開いて、さすがに驚いているようだった。何も言わないし、嫌がる素振りは見せない。

 ーーー手を伸ばせば、触れられる。

 視線は交わったまま、どちらも逸らすことはない。間をおいて、最初に反応を見せたのは七瀬のほうだった。でもただにこりと微笑むだけ。こちらは焦れったさに、ただじりじりと身を焦がしているだけ。

「…オレの家、来る?」

 返事を待つよりも早く、華奢な腰を引き寄せる。

………


 外はまだ明るいというのに、カーテンを締め切って無理やり薄暗くした。視界の悪い室内はしん、と静まっている。

 オレは仰向けに寝転ぶ七瀬を見ていた。その上に覆いかぶさって、彼女を動けなくしていた。両手では、彼女の細い手首をシーツへ縫い付けている。
 別に抵抗はされないのだから拘束しなくて大丈夫。わかってはいるけど、これを解いたら彼女はどこかに行ってしまう。オレのいない日常へと戻ってしまう。そんなことを考えてやまない自分は情けない男だった。

 つい目を奪われてしまう髪は、シーツの上に毛先を散らばらせていた。ひと束を手にとってマスクを下げ、唇を落とす。つやつやとした手触りに、頬を添わせてしまいそうだ。

 上着の裾から手を入れて、強引に肌を露わにさせた。常にハイネックを着用している彼女の、骨の浮かんだ首元に目がいく。その窪みに舌を這わせたら、華奢な肩が震えた。
 強く吸い付きたくなる。赤い印を残したくなる。ふつふつと湧き上がる気持ちを堪えた。

 何度も唇で触れながら徐々に下へとおりていく。すると細い指が伸びてきて、オレの額あてを取り外した。

「カカシのその目、見てみたい」

 ようやく口を開いた七瀬は、閉じた左目をそっと撫でた。恐らくただの興味本位だろうが、不用意に触れられるとこちらの抑え込む欲がちりちり燃える。

「だーめ」
「どうして?」
「見たらそんな気分じゃなくなるよ」
「カカシのこと知りたいな」
「…そういうこと言わない」

 背中に手を滑り込ませてホックを外す。浮いたワイヤー下から指を入れて、その柔らかさに触れた。手の中にすっぽりと収まってしまうサイズで、決して大きくはない。

「ねえ」

 諦めの悪い彼女を黙らせるために先端を指で押しつぶす。ふにゃりと柔らかかったのに摘み上げると硬度が増した。円を描くように指を滑らせる。その反対側を舐めあげると、小さく嬌声が上がった。見せられた反応に満足しつつ、吸い付いて乳首を口に含む。

 優しく愛撫してやりたいと思う。だけど乱暴にしてしまいたい気持ちもあった。対極の狭間で揺れながら、すっかり突起したそれに軽く歯を立てた。



 手を滑らせて横腹を撫でる。ズボンのホックを外してファスナーを下ろした。緩むウエスト部から細い腰が覗く。浮き出た骨盤に引っかかる、薄い布地につい目がいった。
 急く気持ちを抑えながらくびれに舌を這わせる。いささか感度が増したらしい体は、それだけで腰をうねらせていた。

 服を脱がそうとすると自ら腰を浮かせてくる。取り去ると、引き締まった腿が現れた。足の間を割って入り、その中央に視線を注ぐ。

「七瀬」

 そこで初めて名前を呼んだ。下ろしていた瞼がゆっくりと開く。小さな体にのしかかり、顔を寄せた。潤んだ瞳は確かにこちらを捉えている。茶色いレンズには余裕のない自分が映っていた。
 艶のある、ぷっくりとした唇を舌先で舐める。柔らかさを確かめるように甘噛みし、薄く開いたのを合図として熱い中へ自分の舌をねじ込んだ。

 彼女からも絡ませてくるのを自分の方へ誘い込む。怖がることなく伸びてきた舌を優しく吸った。どうしてそうも余裕があるんだよ、と焦燥が募り、七瀬の平常を崩してやる方法を思案する。

 角度を変えて、また自分の舌を差し込む。それと同時に股の間に指をやった。
 
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