デートに行こう!
「…荒い呼吸、赤い顔、潤んだ瞳…なまえお前……
熱あるだろう?」
ギクリ
なんでこんなすぐにバレるかな。
鋭すぎるよツナ!
『……な、ないもん。平熱だもん、元気だもん。待ち合わせ時間に遅れそうで走ってきたから呼吸が荒いだけだもん』
私のつく嘘なんてあっさり見透されそうで、後ろめたさに視線が泳ぐ。
「嘘つけ」
そう言っておもむろに私の額に触れたツナの手が冷たくて気持ちよかった。
「…やっぱり熱い。何度?」
『え?』
「熱、計ってきたんだろ?」
『……さ、36.「なまえ?」38.3度……』
「はぁ……」
尋ねられた体温を偽ろうとしたら黒い笑顔で脅され、正直に告げれば溜め息を吐かれてしまった。
「なんでそんな熱あんのに来てるんだよ。電話でもメールでもして断ればよかっただろ」
『ゔゔ…だって、行きたかったんだもん……デート…』
そう、今日はツナとのデートだったのだ。
テストも終わり、久しぶりに遠出をしようという事で駅で待ち合わせしてたんだけど…朝起きたらボーッとするわ身体だるいわで愕然とした。
それでもどうしてもデートに行きたくて待ち合わせ場所にやってきたはいいが、この有様。
ああ、もう涙出そう。
「帰るぞ」
そう言って私の手を取り駅を背にして歩き出すツナ。
せっかくのデートの約束がダメになり怒ってないかな?
というか私が私にがっかりだよ。
完全に意気消沈して引き摺られるようにして歩いていたら、前を行く彼が突然止まった。
手を引かれながらもなかなか歩を進めようとしない私に焦れたらしいツナが、振り返って素晴らしく爽やかな黒笑顔を浮かべる。
「ん?何?歩くのも辛いならお姫様抱っこで送ってってやろうか?」
『い、いいっ大丈夫っ自分で歩けるから!』
「遠慮しなくていいのに」
言外に「とっとと歩かないなら実行する」と聞こえて熱でボーッとしながらも足を動かした。
だって、家までお姫様抱っこされるなんて…恥ずかしくてご近所歩けなくなるじゃないか!!
「じゃあちゃんと薬飲んですぐに寝とけよ。くれぐれも余計な事は考えないように」
『はぁい…ツナ、今日はごめんね?』
「ばーか、デートなんていつでも行けるだろ。今はなまえの方が大事」
結局家の前まで送られた私。ポフポフと頭を撫でる手が優しくて涙が零れた。
ああ…熱があると涙腺まで弛むらしい。
「何泣いてんだよ。泣き虫」
『〜〜〜っ』
「元気になったら何処へでも連れてってやるから」
『ぅん…』
なんとなく離れがたくて上目遣いにツナを見れば、困った様に笑う。
「…っ、その顔反則」
そう言って軽くリップ音を立てて額にキスした。
「元気になったら覚えてろよ」
『……っ!?///』
耳元で囁かれた言葉に只でさえ高い体温が、更に上昇したのは言う迄もない。
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