とあるメイドの受難2
朝っぱらから私に魔女(!?)のコスプレをさせ、写真を撮りまくって満足したらしいクロームちゃんは任務があるからと早々に帰って行った。
それを幸いに着替えようとしたら、
「せっかく俺が許可してやったんだから今日一日その格好でいろよ」
と素晴らしい笑顔で仰ったツナさんの所為で、この恥ずかしいコスプレのまま仕事する羽目になってしまったのだ。
こんな日は良くない事が起こる気がする…。
「Trick or Treat!クフフ…可愛らしい魔女にどんな悪戯をしてあげましょうかね♪」
ああ…ホラ来たよ。
予想通りだよ。
朝この格好を見て興奮状態だったナッポーが。
去年のハロウィンには私のうっかりで骸さんに猫耳としっぽを着けられるという羞恥プレイを強要されたのだが、それに味をしめたらしい。
だけど今年の私にぬかりは無いのです!
(既に猫耳よりもっと恥ずかしい格好させられてるなんて事はスルーだ。)
『フフフ…甘いですよ骸さん。今年はちゃんとお菓子を準備してあるんですから!悪戯なんてさせませんっ』
「なっ…!」
そう、骸さんが仕掛けてくるのは想定内だったから昨日の内にちゃんとお菓子を作ってあった。
因みに、クッキーと一口パイとカップケーキ。
全てパンプキン味♪
「なんでですか!?何故こんな……っ僕の計画が台無しじゃないですか!」
『計画ってなんですか計画って。いや聞きたくないです。とにかく!はい、これ差し上げますから大人しくしてて下さいね』
言ってラッピングしたお菓子を無理やり手に握らせれば、渋々といった感じで引き下がってくれた。
さて…さすがにちょっと作りすぎてまだいっぱい余ってるし、他の皆さんの所にも配りに行こうかな?
上手くいけば悪戯と称してほっぺた抓るくらい出来るかもしれないし!
『Trick or Treat!お菓子くれないと悪戯しちゃいますよ〜』
「な゙ぁ!?」
最初に襲撃したのは獄寺さん。
…一番危険度が低い人だから。
「チッ…仕方ねぇな……これでいいだろ」
ゴソゴソとスーツのあちこちを探って出てきたのはぶどう味のキャンディ一つ。
獄寺さんが持ってたのは意外だな。
『じゃあお返しにこれどうぞ』
「おぅ…サンキュ」
さて、他に誰が居たかなー?
『リボーンさん、Trick or Treat!』
リビングを覗けばリボーンさんが居たので声を掛けてみたんだけど…
「はっ…ガキじゃあるまいし付き合ってられるか」
なんて鼻で笑われてしまった。
ちょっとリボーンさん!そこはノリで付き合ってくれてもいいじゃないですかっ
「それに俺は悪戯されるよりする方がいい」
『残念でした!私はちゃんとお菓子持ってますから』
「じゃあ貰ってやるから悪戯させろ」
『意味が分かりません』
なんでお菓子あげた上に悪戯されなきゃならないんですか。というかリボーンさんの悪戯は危険な気がする。
骸さんとは別の意味で!
「なんだ、俺に悪戯されてぇのか?」
『ととととんでもございません』
「遠慮しなくていいんだぞ」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべるリボーンさんに危険な香りがして思わず後退りしてしまったのは学習能力の賜物だろうか。
これ以上ここに居るのはヤバイ気がする!!
『そそそそれじゃ私はこれで!』
私は脱兎の如くリビングから逃げ出したのだった。
『後はー…ツナさんか…………………止めとこう』
これ以上やぶ蛇はゴメンだ。
「俺がどうしたって?」
『ひっ!?』
突然声を掛けられ、振り返ったそこには…素敵笑顔のツナさんが立っていた。
「やっぱりその衣装似合ってるね」
『……あ、ありがとうございます』
あんまり嬉しくないけど。
「で、可愛い魔女さんはお菓子持ってない俺にどんな悪戯してくれるのかな?」
そうきたか……っ!
なんでそう自分から悪戯されたがるんだ!?
『ご…ご主人様に悪戯なんて出来ません、よ?』
なんて。
下手に悪戯なんてしようものなら後でどんな目に合わされるか分からないからね。
上手くかわしたと思ったのに、ツナさんの口端がニヤリと上がっていく。
あれ…私何か間違えた!?
「ご主人様、ねぇ……じゃあ命令な。大人しく悪戯されろ」
気付いた時には私を囲む様に壁に手をつかれ逃げられなくなっていた。
『そっそんな理不尽な命令は聞けませんっっ』
「なまえがそんな可愛い格好してるのが悪い。素直に俺に喰われろよ」
それって私の所為じゃないってばー!
クロームちゃんのばかぁぁ
無駄に整った顔がだんだん近付いて来る。
どんな悪戯をされるのかドキドキしていたら、目の前をヒュッと風を切る音と共に何かが横切ってツナさんと私の間に割り入った。
「僕のなまえに何してるんです綱吉?」
「チッ…良い所で邪魔しやがって…」
突然の乱入者は予想外の骸さん。
さっき横切ったのは彼の三叉槍だったのか。
とりあえずの危機は去ったものの、ツナさんのオーラが黒くなっていくのが新たな恐怖となって襲ってくる。
「僕でさえ引き下がったのに、そう簡単にさせませんよ。なまえに悪戯していいのは僕だけです!」
「ふざけんな」
「ブフッ」
ゲシッ…と鈍い音をさせてツナさんの足(靴)の裏が見た目だけは良い骸さんの顔に沈んだ。
え゙え゙え゙ーーっ!?
続けてゲシゲシと骸さんを足蹴にするツナさん。
………顔が恐ろしいです。
けれどお陰で解放されたし今の内に逃げねば!!
骸さんの尊い犠牲は無駄にはしませんから!(ホロリ)
『じゃあ私仕事に戻りますから!』
「は!?ちょっ、待っ…」
ツナさんの言葉を最後まで聞いてなるものかとダッシュで逃げる。
後ろで何か言ってたけど聞こえない振りをした。
ああもうハロウィンなんて嫌いだぁぁぁあ!!
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