とあるメイドの受難
朝、目を覚ますと目の前にクロームちゃんの笑顔があった。
(おかしいな、部屋の鍵閉めてたはずなんだけど)
「なまえおはよう。うふふ…眠ってるなまえも可愛い」
『……おはよう…クロームちゃん。えっと…こんな朝早くからどうしたの?』
「今日はハロウィンでしょ!だからなまえに仮装用の衣装を持ってきたの♪」
そう言って満面の笑みで広げ見せたそれに未だ半分程残っていた眠気は吹っ飛んだ。
『くくくクロームちゃん、ここここれは一体……何の…?』
「もちろん魔女よ!小悪魔とどちらがいいか悩んだんだけど、初めてだしここはオーソドックスに魔女かなって」
ニッコリと可愛らしく小首を傾げたクロームちゃんに言いたい。
これ、どう見てもオーソドックスな魔女の衣装に見えないんだけど!?
黒のワンピースなのはまぁいい。
レースやフリル、リボンがふんだんに使われているのも…妥協しよう。(多少免疫がついた。メイド服で)
でもね、
なんでこんなに胸元開いてるの!?スカート丈短いの!!??
『や…あの…これはちょっと私は着れないかなー?』
「大丈夫!なまえに似合うようにって作ってきたんだから」
嗚呼…これクロームちゃんの手作りなんだ…。
あの時採寸したのはこれに使われたのね。
お願いだからそんなキラッキラした期待の眼差しで見つめないで!
『でもホラ、私仕事しないといけないし。せっかくの衣装汚しちゃうと悪いから、ね?』
「大丈夫、これは今日だけの衣装だもの。気にしないで?」
なんとか諦めてもらおうと捻り出した理由も素敵笑顔で一蹴。
「さぁ早く着替えないと。朝食の準備とかあるんでしょう?」
まったくその通りなんだけどね。
それを阻んでいるのは貴女なのよ、クロームちゃん。
『えと、でも、そう!仕事中に仮装なんてツナさんに怒られるよきっと!』
「ボスの許可は貰ってあるから安心して♪」
『よ…用意周到だね…』
周到過ぎるよ!!(涙)
そしてなんで許可するかなツナさんも。
「ほらほら急がないと!私が着替えるの手伝ってあげる♪」
言うが早いか、見事な手際で私の着ているパジャマを剥ぎ取っていく。
『ちょっえっやっ……
きゃああぁぁぁ……っ!!』
……………
「仕上げにこの帽子と、あとこれ持って……いやぁぁん可愛いーーーっ!」
鏡の前に立たされ、そこに映る自分の姿の恥ずかしさにクラリときた。
クロームちゃんのお手製の黒ワンピースにニーハイのロングブーツ、髪は黒のリボンでツインテールに結わえられ、つばの広い先の曲がった大きめのとんがり帽子を被せられている。
そしてオプションとして黒猫のヌイグルミ。
いつも着ているメイド服に不本意ながら漸く慣れてきた私だけど、これはそれを上回る恥ずかしさだよ!
朝からテンションだだ下がりな私とは対称的に、ハイなクロームちゃんはカメラ片手にきゃあきゃあはしゃいでいる。
「さて…と写真も撮ったし、じゃあ皆に見せに行きましょ!」
『え……いやーーーっっ!!』
私の叫びと涙は朝靄に呑まれ消えたのでした……(泣)
(次はクリスマスよね!)
(え゙……っ;;(勘弁して下さい))
[*prev] [next#]
[back]