熱があるのはどっち?


カルマが学校を休んで今日で3日目。
決してサボっているという訳ではなく、風邪をひいてしまったらしい。
夕方、紗良は一人で学校から帰りながらカルマに電話をかけた。

「カルマ、体調はどう? 大丈夫?」

「昨日よりはだいぶ良いよ。まだ熱はあるっぽいけど」

「そっか……。ねぇ、今日はお見舞いに行ってもいい?」

「だーから、ダメだって。伝染ったらどーすんの」

そんな調子で紗良はこの前からずっと断られ続けている。
紗良はカルマが自分の事を気遣ってくれているのだと分かってはいたが、それでもやっぱり会いに行きたかった。

「カルマの風邪なら伝染ってもいいよ……?」

「あはっ、なにそれ」

苦し紛れでそんな事を言ってみたが、カルマに笑われてしまった。

「だ、だって……何日もカルマに会えてないから寂しい……」

つい本音が漏れる。

紗良とカルマは恋人同士だ。
告白をしたのは紗良の方からだった。
1年の頃から紗良はずっとカルマの事が好きで、ずっと追いかけていた。
そして最近やっとOKを貰えて付き合うようになったのだが、時々紗良は自分ばかりがカルマの事を好きなんじゃないかと不安になる。

(カルマは、私に会えなくても平気なのかな……)

だけど、紗良のそんな不安な気持ちは、カルマの一言でいつもあっという間に消え去ってしまう。

「……しょーがないなぁ」

「え?」

「そこまで言うなら来ていいよ。ていうか来て。俺も紗良に会いたいし」

その言葉を聞いて、紗良の顔がパァっと明るくなる。

(カルマが会いたいって言ってくれた……!)

自分は本当に単純だなと思いつつも、紗良は嬉しい気持ちを抑えきれない。

「うん……! 走って行くね!!」

「いや……危ないから、歩いてきて?」

カルマは浮かれている紗良の事が少し心配になるのだった。







紗良は早歩きでカルマの家へとやってきた。
ピンポーン、とチャイムを鳴らす。
するとすぐに玄関の扉が開き、カルマが顔を出した。

「やっほ、紗良」

数日ぶりに見るカルマの姿に紗良の胸が高鳴る。
紗良はカルマに会えたことが嬉しくて、飛びつくようにギュッと抱きついた。

「カルマっ、久しぶり……!」

カルマは少し呆れたように笑いながら、紗良の頭をよしよしと撫でてくれた。

「そんなに俺に会えないのが寂しかった?」

「うん……。カルマ、具合はどう?」

「別に平気だよ」

カルマは思ったより元気そうな感じで紗良は少しほっとした。

「とりあえず中入って。見られてるから」

「えっ!?」

近所のおばさんがこちらをちらちらと見ているのに気がついて、紗良は慌ててカルマから離れる。

(は、恥ずかしい…)

ついテンションがあがってカルマに抱きついてしまったが、まさか人に見られていたとは思わなかった。

「お、おじゃまします……」

そう言って紗良はカルマの家に上がった。

「今日も居ないの?カルマのお父さんとお母さん」

「うん。先週から旅行に行ったっきりまだ帰ってきてないよ」

「そうなんだ……。カルマ、ちゃんとご飯食べてる?」

「んー……あんまり」

話を聞くと、熱のせいで食欲もあまりなかったらしく、イチゴ煮オレばかり飲んでいたらしい。
風邪をひいている時に飲む飲み物として、いちご煮オレはちょっとどうなのかと紗良は思った。

「ちゃんと食べないと治らないよ?」

「んーじゃあ、紗良が何か作ってよ」

「わ、私が? 作れるかな……」

紗良はキッチンを借りて、カルマにおかゆを作ってあげた。

「これなら食べれるかなと思ったんだけど……どうかな」

「ありがと、食べるよ。見たらお腹減ってきた」

カルマはスプーンを手に取ると、少し考えた後それを紗良に手渡した。

「……?」

紗良はカルマの行動の意味が分からず、きょとんとした様子でカルマの方を見る。
カルマはニコリと笑うとこう言った。

「紗良が食べさせてよ」

「!」

ちょっと恥ずかしいが、大好きなカルマの頼みを断れるわけがない。
紗良はおかゆをスプーンですくってカルマの口元に持っていく。

「は、はい。あーん」

「ん」

「……どう?」

「うん、美味しいよ」

「よかった」

好きな人に自分の作ったものを美味しいと言ってもらえるのはとても嬉しいものだと紗良は思った。





「はーお腹いっぱい」

紗良の作ったおかゆを全て平らげたカルマは、そのままゴロンと床に寝転がった。

「カルマ、寝るならちゃんとベッドで寝ないと」

「ちょっと横になるだけだって」

「ならいいけど……。そういえば、熱は何度あるの?」

パッと見元気そうな感じだが、いつもより心なしか顔が赤いので熱はあるのだろう。

「さぁ? 風邪ひくの久しぶりすぎて、体温計が家のどこにあるのかわからないんだよね」

「じゃあ買ってくればよかったね」

そう言いながら、紗良はカルマの近くに寄るとそっと手を伸ばし、額に手を当てた。

「……あついね」

「紗良の手は、冷たくて気持ちいーね」

カルマが気持ちよさそうに目を細めるので紗良はしばらくそうしていたが、突然ぐいっと手首を引かれカルマに抱きしめられた。

「わっ!?」

「でもやっぱさ、こうやって熱を測るのが一番良いと思うんだよね」

カルマは自分の額と紗良の額をくっつけた。

「……あれ、紗良も熱ある?」

「そ、それは、カルマの顔が近いからっ……!!」

「ふーん?」

カルマはそう言って、紗良にそっと口づけた。
触れた唇から熱が伝わる。

「……本当に、熱出ちゃうかも」

「俺の風邪なら伝染ってもいいんでしょ?」

「うん……良いよ」

「じゃ、遠慮なく」

そしてキスをもう一つ。
繰り返されるキスに、紗良の頭は熱に浮かされたようにぼんやりとしていった。



数日後、紗良が風邪をひいてしまったことは言うまでもない。



熱があるのはどっち? end

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