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「えっと、この道を右に曲がって……」

紗良と渚の2人はスマホのナビを頼りにクレープ屋さんを目指していた。

スマホの画面に集中していたため紗良は前から歩いてきた人に気付かず、肩がぶつかってしまった。

「あ、すみませんっ」

紗良は慌てて頭をさげて謝った。渚も一緒に「すみません」と謝ってくれた。

相手は高校生で、髪を明るく染めており、耳にはピアスをいくつも開けていた。

(ど、どうしよう。ちょっと怖そうな人だ……)

何を言われるかと内心怯えていた紗良だったが、相手は明るい声で

「いーよいーよ。ぶつかったのはお互い様だし」

と言って笑ってゆるしてくれた。紗良はホッと胸を撫で下ろす。

「あの、前見てなくて、すみませんでした」

「いいって。それより君、中学生? その制服、椚ヶ丘中学っしょ? 頭いいんだね〜。今学校帰り?」

矢継ぎ早に質問を浴びせられ、紗良は戸惑いながらも「はい、はい」と答える。

「っていうか君、可愛い顔してんじゃん。そうだ、今からお兄さんと2人で遊ぼっか〜」

「……えっ!?」

男子高校生は、紗良の返事も聞かぬまま肩に手を回し、そのまま連れて行こうとする。

「あ、わ、私、この後予定が……!」

「いーじゃんいーじゃん。楽しい遊び教えてやるよ」

それまで完全に存在を無視されていた渚だったが、紗良が連れて行かれそうになり慌てて呼び止める。

「ま、待って下さい。紗良ちゃんは今から僕と約束があるんで、放してもらえませんか」

そうキッパリと言い、男子高校生の前に立つ。
すると相手は少しむっとしたような表情をして、

「あぁ? お前に用は無いからどっか行っててくんね?」

と言うと、渚の肩を思い切りドンッと押した。

「わっ!」

渚は突き飛ばされ地面に尻もちをつく。

「渚君っ!!」

紗良は慌てて渚に駆け寄ろうとしたが、男子高校生に手首を思い切り掴まれ阻止されてしまった。
そのままぐい、と引っ張られる。

「じゃー行こうか」

「やっ! は、放して……!」

必死に抵抗するが、高校生相手に力で叶うわけもなく、そのまま引きずるように連れて行かれてしまう。

(誰か……!)

その時――。

「何してんの」

後ろから聞こえてきたのは、あの人の声。

「赤羽くんっ!!」

声のした方に振り返ると、そこにはポケットに両手をつっこんで立っているカルマの姿があった。

「やっほ、紗良ちゃん」

カルマは紗良に軽く挨拶したあと、男子高校生の方へ鋭い視線を向ける。

「で、お兄さん。いい加減その手離しなよ」

「ンだテメェは。俺は今からこの子とデートすんだよ。邪魔すんじゃねぇ」

「邪魔なのはそっち。彼女嫌がってるの分かんない? あぁそっか、あんたモテないからそうやって無理やり女の子連れてく事しか出来ないんだね〜」

カルマは相手を馬鹿にしたようにそう言うと、ケラケラと笑った。

それを聞いた男子高校生は額に青筋を立て、怒りでプルプルと震えている。

(な、なんかやばそうな雰囲気なんですけど……!)

青ざめる紗良。

「……言わせておけば調子乗りやがって、このガキがぁっ!!」

そう言って男子高校生はカルマに殴りかかった。
しかしカルマは相手の攻撃を意図もたやすくヒョイッとかわすと、足を出して引っ掛ける。
男子高校生はバランスを崩し派手に転んだ。

「くっそこの……!」

そう言い立ち上がろうとしたが、体制を立て直す前に素早くカルマに襟を掴まれコンクリートの地面に頭から叩きつけられる。

「ぐあっ!」

「殴りかかってきたのはそっちだから、正当防衛ね」

カルマは笑顔でそう言と、男子高校生の顔面に容赦なくパンチをお見舞いした。
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