天気がよく、動物園は家族連れで込み合っているようだった。
ダーズリー夫妻は入口で、ダドリーとピアーズに大きなチョコレートのアイスクリームを買い与えていた。
ハリーと私を慌ててアイス・スタンドから遠ざけようとしたらしいが、 間に合わなかったらしく、
売り子のおばさんが坊やとお嬢ちゃんは何がいいのと聞いたので、渋々と私とハリーに安いレモン・アイスを買い与えた。
私は美味しそうにアイスを舐めるハリーを見て、
私のあげますと無理矢理ハリーに押し付けた。
そうしながら、みんなでゴリラのおりを眺めた。
ゴリラ……大猿化したサイヤ人にそっくりだなあ。
昼近くになり、ダドリーもピアーズも動物に飽きてきたようだ。
ハリーはなぜか警戒しながら二人から離れ、私の後ろにまわって歩いている。
園内のレストランで昼食を食べた。
ダドリーがチョコレート・パフェが小さいとかんしゃくを起こし、バーノンがもう一つ買ってやるはめになり、私とハリーにパフェのお下がりがまわってきた。
……ふざけないでほしい。
さっきからまるで私はついでみたいな扱いじゃないか!
もし私がパパかクリーザだったら、こいつらはもう確実に死んでいるだろう。
「はあ……。
ハリーさん、そのパフェ一人で全部食べていいですからチラチラ見ないでくれます?」
「うっ、うん……ありがとう!」
私は優しいから、
ハリーの唯一の身内を奪うような真似はしないんだよ。
昼食の後で、爬虫類館を見た。
ガラスの向こうには気色の悪い爬虫類どもがいて、材木や石の上をするすると這い回っていた。
ダドリーはすぐに館内一大きなヘビを見つけた。
だがそのヘビはぐっすり眠っているようで、たとえ戦闘力が二ぽっちでもあっさりと殺せるんじゃないかと思えるほど無防備だった。
ダドリーはガラスに鼻を押し付けて、ヘビを見つめていた。
「動かしてよ」
ダドリーはバーノンにせがんだ。
バーノンはガラスをトントンと叩いたが、ヘビは身じろぎもしない。
実は死んでるんじゃないのか?
「もう一回やって」
ダドリーが命令した。
バーノンは拳でドンドンとガラスを叩いたが、ヘビは眠り続けている。
「つまんないや」
ダドリーはブーブー言いながら行ってしまった。
ハリーはガラスの前に行き、じっとヘビを見つめていた。
何やってるんだ?
死体同然の動かないヘビなんて見て何が楽しいんだろうか。
ハリーを観察していると、突然ハリーは慌てたように周りを見まわした。
「どうしました?」
「いや……ヘビがウインクしたように見えて」
「ウインク? ヘビが?」
ヘビをひょいと覗くと、しっかり目を開いていて、じっとこちらを見ていた。
「いつもこうさ」
「!? へ、ヘビが喋った!?」
「わかるよ」
「……は、ハリーさん……?」
ヘビが喋るというとんでもないことが起こったと言うのにハリーは平然としていて、
おまけに返事を返していた。
「ほんとにイライラするだろうね」
ヘビは激しく頷いた。
驚きでハリーとヘビの会話の内容が頭に入ってこなかった。