うたた寝の夢 | ナノ


04  


やがて母親らしき女性に連れられて、ガリガリに痩せている子供が部屋に入ってきた。
ダドリーはたちまち嘘泣きをやめた。

「あの子供は?」
「ピアーズ・ポルキスだよ」
「ふむ……ありがとうございます」

30分後、私たちは車に乗せられ、動物園へと向かった。
後部座席に四人で座った。狭い。

出発前、バーノンは私とハリーをそばに呼んだ。

「言っておくがな……」

顔を私とハリーの目の前に突きつけた。

「変なことをしてみろ。ちょっとでもだ、
そしたらクリスマスまでずっと物置に閉じ込めてやる」
「僕、何もしないよ。ほんとだよ……」
「閉じ込めるのは構いませんが、物置がどうなっても知りませんよ?」
「アイス!!」
「ふん……冗談ですよ、ハリーさん」

そう言ってバーノンをちらりと横目で見てみると、全く信じていないようだった。
しかもさっきよりも険しい顔になっている。

この人、からかうと面白そうだな……。






「……ムチャクチャな音を出して走りおって。チンピラどもが」

オートバイに抜かれた時、バーノンは運転をしながらブツブツと文句を言っていた。
口が悪いな。

「僕、オートバイの夢を見た」

ハリーは思い出したように言った。

「空を飛んでたよ」

その瞬間、バーノンは前の車にぶつかりそうになった。
野蛮で荒い運転だ。私が代わってやろうか。

バーノンは運転席からグルッと振り向いて
ハリーを怒鳴りつけた。

「オートバイは空を飛ばん!」

ダドリーとピアーズがクスクス笑った。
私も笑いそうになったが、堪えた。

「飛ばないことはわかってる。ただの夢だよ」

ハリーはすっかり落ち込んでしまった。
さすがにちょっと可哀想だ。

「オートバイは空を飛びますよ」

そっとハリーに耳打ちすると、ハリーはぎょっとして私を見た。

「え? と、飛ぶの?」
「ええ、もちろん。
オートバイだけでなく、車もね」


そう言い終わると同時に、私はパチンとウインクを一つし、窓の外に目をやった。

「地球の文明は遅れている……あなたは予知夢でもを見たのでしょう。
ハリーさんは予言者になれるかもしれませんね……」
「よ、予言者……。
でもその言い方ってまるで……」

私は怪訝そうに言うハリーに首を傾げた。

「なんですか?」
「君は地球じゃない星に行ったことがあるの?」
「……あー…………」

しまった。
地球になりきれなければ地球の生活に溶け込むことができない。
宇宙人などと騒がれてしまえば最後、私はこの場で浮いてしまう。

「そ、それはですね、その……」
「え?」
「ほ……本! 本です!
本で見たのです!!」
「本?」
「ええ、そうです……」
「なーんだ」

納得したハリーを見て、心の中でガッツポーズをとった。


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