うたた寝の夢 | ナノ


02  


「さあ起きて! 早く!」

突然甲高い声が聞こえ、飛び起きた。

「起きるんだよ!」

さらに、金切り声。


ま、待て。何が起こっている?
こんなときはまず状況を整理しろとパパが言っていた。
さあ、考えるんだ。
さっき私はどうしていた?

……ああそうだ、私は穴に吸い込まれたんだった。
何かの本で読んだ気がする。宇宙には時間や光さえも吸い込む穴が……ってそれはブラックホールか。違うな。

ここはどこだ?
私は小さないかにも貧乏人が使っていそうなボロボロのベッドの上にいる。
そしてこの部屋、狭い。すごく。
そういえば前にどこかの星でこんな家を見た。

なぜこの私がこんな所に?
もしかしてあの穴は時空の歪みというやつだったのだろうか。

「まだ起きないのかい」

戸の向こうからさっきの声がまた聞こえている。

「もうすぐだよ」
「!?」

また違う声が今度は背後から聞こえ、振り向いた。

……あ、もう一つベッドがあって、人が寝ていたのか。気がつかなかった。
尻尾がないがサイヤ人に似ている。まるでサイヤ人の少年のような風貌だ。

「さあ、支度をおし。ベーコンの具合を見ておくれ。焦がしたら承知しないよ。
今日はダドリーちゃんのお誕生日なんだから、間違いのないようにしなくちゃ」

背後の少年がうめき声を出した。

「何か言った?」

かみつくような調子の声。

「なんにも言わないよ。なんにも……」
「……あの、」
「ん、どうしたの? アイス」
「!? な、なぜ私の名前を知って……!? し、しかも呼び捨て……。
ま、まあいいでしょう。あなた、誰です?」

え? と目を大きく見開いた少年を横目で見ながら、スカウターを探す。

どこだ、私のスカウター!

……あ、あった。

さっと付けて少年にセットする。
戦闘力……
…………え?

「戦闘力、2? ……雑魚」
「僕はハリーだけど……どうしたの?
戦闘力って何? 雑魚?」

怪訝な顔をする少年……いや、ハリー。
ハリーは私のことを知っているようだ。
どこかで会った? パパの知り合い?

まあそんなことはどうでもいい。

「ハリーさん……ですね、ありがとうございます。戦闘力……は気にしないでください。
もう少し質問してもいいですか?」
「いいけど……」

私はコホンと咳払いを一つし、にっこりと笑った。

「ここはどこですか? なんという星ですか?」
「地球だよ」
「さっきの声の主は誰ですか?」
「ペチュニアおばさん……だよ」
「おばさん? ……あなたの両親は?」
「自動車事故で死んだよ」

ハリーは前髪を上げて、これがその時の傷で、私にも同じものがあると言った。

「ここの家に住んでるのは、あなたと、ペチュニアおばさんだけなのですか?」
「ち、違う。バーノンおじさんと、ダドリーも住んでる」
「ああ、ダドリーさんは誕生日だとか言ってましたね。ふうん……。
なるほど、そうですか……」

質問攻めのあと、この家のことを頭の中で整理していると、ハリーは不思議そうに言った。

「君だってこの家に今までずっと住んでたじゃないか。
どうして今更そんなこと聞くの?」
「今までずっとですって?」

思わず何を言ってるんだと言ってしまいそうになった。

「私は誰なんです?」
「そ、そんなことも忘れちゃったの!? もしかして記憶喪失?
君は僕の双子の妹だよ!!」
「双子の、妹? じゃああなたは私の……」
「君の兄だよ」
「な、なんですって……!?」

私の双子の兄はクリーザだ。これは永久不滅の事実。
そして親は宇宙の帝王であるフリーザだ。

私のパパは事故で死ぬようなマヌケじゃない!

今会ったばかりの少年に、この私と血縁関係があるだと?

今日は次々と意味がわからないことばかり起こる。
全てはあの穴に吸い込まれたことから始まった。

あのわけのわからない穴め……絶対に許さん………!!

気がつけばハリーはもう着替え終わっていて、早く来なよと言ってから部屋から出て行った。

「え……」

頬をつねってみるが、普通に痛い。
試しに舞空術を使ってみる。
……ちゃんと浮ける。
エネルギーの塊だって作れる。超能力も使える。

よかった。不幸中の幸い、
これができないとなると戦闘力2程度の下等生物の虫けらどもに舐められてしまうところだった。

心に余裕ができた。
私はここに住んでいることになっているようだから合わせておこう。

庶民の生活をしてみるのもたまにはいいだろう。
私は新しい生活にウキウキしながらクローゼットを開けた。
クローゼットの中に大きな鏡が見える。
そっと覗いてみると、



……………………え?

「うっ、うわああああああ!?!?」
「アイス!!!! 静かにしろ!!!!!!」

鏡に映った私の姿は以前と少し変わり、角を生やしたサイヤ人のような風貌になっていた。


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