▼ 3
ドンドンと扉を何度も叩く音で目が覚めた。
重い体を起こして、ベッドから這い出て、
眠い目をこすりながらのろのろと扉に向かった。
「はーい、誰だい?」
精一杯の笑顔を作って扉を開けると、そこには昨日会ったカービィとメタナイトがいた。
「おおっ! 昨日ぶりだね。
おはよう君達」
「もう昼だぞ」
「寝すぎだよアミー」
そう言われて時計を見ると、短い針が二を指していた。
寝すぎたか。いい感じにのんびりできてるみたいでよかったよ。
「で、何の用かな?」
「もう忘れたのか。デデデ大王の所に挨拶だ」
……あ、そういえば昨日そんなことを言っていたね。
国王か……魔王の娘である私は超エリート!
エリートはエリートらしく、同じくエリートの国王と結婚するべきではないだろうか。
「よし、決めた。この私アミーはデデデ大王と結婚する!」
「ええっ!? アミー、正気!?」
「……アミー、デデデ大王は確かに国王だが全く国王らしくはない。悪いことは言わない。やめておけ」
「……ええ……?」
二人は私を説得するように必死で主張してきた。
堅物そうなメタナイトでさえかなり焦っているようだ。
ここまで敬われていない国王とは一体どんな人物なのだろうか……。
私は二人の言うことを素直に受け入れ、一抹の不安を感じながら二人について行った。
*
「入るがよいぞい」
「いいか、デデデ大王はとても短気なお方だ。
くれぐれも無礼のないように」
「しっつれっいしっま〜す!!」
「お、おい……!」
メタナイトの忠告を無視し、国王の扉をバンっと大きな音を立てて元気に乱暴に開けた。
「どうも! お初にお目にかかります、デビル星から来ましたアミーでございます!」
「!? ……ま、まあいいぞい……。よく来たぞい」
デデデ大王は一瞬信じられないようなものを見るような顔をしてから、少し疲れた表情になった。
この人もまだ眠いのだろうか。
「デデデ大王! 単刀直入に言う! この国に私を住ませてくれ!」
「
アミー、アミー!! 陛下にそのような口の聞き方を……!」
「……」
「うわー! デデデ大王絶対怒ってるよ! どうすんのアミー……!」
デデデ大王が口を開こうとして、二人はこの世の終わりのような顔をした。
わけがわからず私は首を傾げてデデデ大王が言葉を発するのを待っていると、
「お前、よく見るとすっごく可愛いぞい! 決めたぞい、アミーは今からわしと結婚するぞい!」
「だよね〜! よく見なくっても私の可愛さは天下一だか……え? ケッコン?」
二人がこの世の終わりのような顔をしていたのはお付き合いを飛ばしていきなりのプロポーズを恐れてだったのだろうか?
……いや、違う。二人は呆気にとられたような顔をしているからこれは想定外だったのだろう。
「そう! 結婚ぞい! 今すぐ式を挙げるぞい!」
「ちょっとデデデ大王! 何言ってるの!?」
「おっ、お待ちください陛下! そんな急に……!」
「そうだぞ大王! いきなりプロポーズなんて非常識だぞ! まずは付き合ってくださいだ! ほら言ってみ」
「アミーはもう喋らないで!!」
二人は必死になってデデデ大王を説得している。
だけどどうやら説得には応じずに嫌ぞいなどと言いながら駄々をこねていた。
まるで子供のようだ。私も子供だけど。
「まあまあ、落ち着け諸君」
「これが落ち着いていられるか!」
「アミー、はいかイエスで答えるぞい!」
「それじゃどっちも同じだよ!」
この騒ぎの原因であるこの私がわざわざなだめてやったが、どうやら無意味のようだ。
このままじゃ埒が明かないので、
邪魔者である私はこの場を立ち去ろうと扉に手をかけると、なぜか扉が勝手に開いて私の顔に激突した。
「痛いじゃないか、このやろ!」
扉に向かって文句を言っていると、聞きなれない声が聞こえてきた。
「はっ! これは申し訳ありませんでし……
あっ、あなたは昨日の……!」
「ん?」
声のするほうを振り向くと、一つ目の球体がいた。
そういえば昨日ここに来た時に見た気がする。
「アミー」
「あ、メタナイト」
決着のついたらしい三人はこちらに歩いてきていた。
まったく、世話の焼けるやつらだね。
それよりデデデ大王はにやにやとしているのに対し
、メタナイトとカービィは何やら深刻な面持ちでいるのに違和感を感じる。
メタナイトはやや早足で私の真横に立ち言った。
「逃げるぞ」
その瞬間、メタナイトとカービィが私の両腕を掴んで部屋の外に出て窓から飛び降りた。
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