デビルガール | ナノ

 1

それは、ある日のことだった。



今日は流星群が見えるとのことで
ポップスターの住人達は外に出ていて、
流星群が来るのを空を眺めて待っていた。

「あっ、来た!」

誰かが言ったその言葉を合図に、一気に流れ星が空を駆け巡った。


しかし、一部の者がある異変に気づいた。

「ねえあれ、変じゃない……?」
「ホントだ。何あれ?」

皆が一つだけ右に行ったり左に行ったりと妙な動きをしている流れ星を指さして、
ざわざわと騒ぎ始めた。

次第にその星は大きくなり、どうやらポップスターに向かってきているようだった。

隕石だ! と星の住民達は慌てだし、取り乱している。
逃げろと誰かが叫び、一斉に隕石から逃げ始めた。

そして大きな衝撃音と共に一気に砂埃が舞い、皆は口を押さえて咳き込んだ。

しばらくすると砂埃が引いて隕石が見えてきた。
だんだんと星の住民達はそのまわりに集まってきて、どんな隕石が落ちてきたのか見ようとしていた。

砂埃が完全に引くと、見えたのはなんと大きな隕石ではなく
人が一人住めるくらいの大きな宇宙船だった。

扉と思われる所からガタッと音がして、皆が凝視する。
やがてゆっくりとそれが開くと、中から人型の変わった格好をした少女が現れた。

「ふう、やっと到着。おや皆さん! お揃いで歓迎してくれてるのかな?」

にこにこと愛想の良い笑顔で二本の鋭い八重歯を覗かせながら、呆気にとられている人々を見ながら少女は続けた。

「ここはポップスターで合ってる? ここに悪魔がいるって聞いたんだけど」
「合ってるよ」
「悪魔って?」
「悪魔……ピンクの悪魔のことか?」
「カービィならいるよ!」

人々が口々に少女の質問について答えると、少女は笑顔をさらに深いものにした。

「よかった! ありがとう。
で、カービィはどこに?」
「カービィは僕だよ」

少女は前に出てきたカービィと名乗る者を見て、目を丸くした。

「き、君が? 悪魔? カービィなのかい?」
「そうだよ。悪魔っていうのはみんなが勝手に言ってるだけだけど……」
「そうなのか……」

少し残念そうにしている少女にカービィは尋ねた。

「で、君は誰なの?」
「ああ、自己紹介が遅れたね!
私はアミー! デビル星から来た悪魔だ!」
「悪魔!?」

カービィは少女をまじまじと見て、さっきからひらひらと動いている尻尾や羽、角、真っ赤な目を見てはっとした。
確かに悪魔っぽい! と。

「格好は悪魔みたいだけど……」
「だけど?」
「だけどなんだか、悪魔って感じがしないよ。
顔つきが悪魔っぽくないし」
「フフーン!」
「うわっ、何!?」

突然笑いながら両手で持ち上げてきたアミーにカービィはとても驚き、身構えた。

「そりゃあもちろんこの私、
アミー様がカワイイから! だろ!」
「えっ……ええ……?」

にこにこ笑いがニタニタ笑いに変わったアミーを見て、カービィは酷く動揺した。
ドヤ顔ともとれるその表情は見る人にとってはとても腹が立つものだったが、
持ち上げられたままぐるぐると回転させられているカービィには腹を立てている余裕などなかった。

カービィは必死の抗議でやっとのことで下ろされたが、地に足をつけているだけなのに目が回ってしまったのでふらりと尻餅をついた。
皆がカービィのまわりに集まってきて大丈夫かと声かけをした。

「あっ……ごめん、ごめんね!」

それを見たアミーは慌てて謝り、カービィの手を取って立ち上がらせた。

「あーびっくりした……。ところでアミーはどうしてポップスターに来たの?」
「ああ、そうだ! 私はデビル星の魔王の娘なんだけど、」
「魔王の娘!?」
「そうだ! すごいだろ!」
「続けて」
「あ、はい。次期魔王は私の予定だったんだけど、私があまりにも出来損ないだから、よその星で修行してこいとのことでした」
「出来損ないって?」
「勉学も運動も戦闘も、星一番できないんだ! ははは!」
「いや笑ってる場合じゃないよ!」

思ったよりも深刻な状況にカービィは驚愕した。
アミー本人がケロッとしていることにも驚いた。

「話は聞かせて貰ったぞ」
「あれっ、カービィの兄弟?」
「メタナイト!」

突如現れたメタナイトにアミーは目を丸くして、頭にハテナマークを浮かべていた。

「アミー。これからどうするんだ?
悪魔はここにはいない。いいのか」
「最初っから聞いてたんだね。うーん、どこでもよかったんだけど強い悪魔がいるって聞いたからここに来ただけだし、いいよ別に。
しばらくここに住んでもいいかな?」
「私は一向に構わないが、他はどうだかわからない。
とにかくデデデ大王に挨拶をしないといけないだろう」
「えっ、デデデ大王? 挨拶なんて別にいらないんじゃない?」
「駄目だ。あれでも一応国王だからな」

アミーがデデデ大王と呼ばれた人物の敬われてなさっぷりに驚いていると、

「今日はもう遅い。挨拶は明日にしよう」

メタナイトはそう言って去っていった。


「流星群ももう終わったみたいだし、僕も帰るよ。また明日ね!」
「ああ、また明日! おやすみ!」
「おやすみ!」

続いてカービィも帰り、まわりにいた人達もいつの間にかいなくなっていた。

アミーはふうと一息ついてから、宇宙船に戻っていった。
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