両難 (6/9)
「でか‥‥」
白魔導都市、その中心の神殿とだけあってその重厚な佇まいに息をのむ
きょろきょろしながら神殿の中へと足を踏み入れる
煌びやかな内装を想像していたけれど、実際は厳重な雰囲気を醸し出しており静寂が空間を支配していた
その空気に圧倒されるように静かに中へ中へと足を進める
一際広い空間に出るとその中心には竜の形をした石像が立っていた
「これが‥‥」
この世界の神様。赤の竜神、スィーフィード。
赤眼の魔王と対をなす存在。
そして白魔術のシンボルと言える神を祀っている此処が聖なる結界の中心点。
この都市の中心地。
感慨に浸りつつ見上げながらそっと石像に近づく
この都市に来て、色々な知識が繋がってきた
それでも、世界を渡る‥‥なんて記述がそう簡単に残されていることは無くて
少しでも、自身の謎がわかればリナさんの役に立てることもわかるかもしれないのに
それにしても、なんでだろ‥‥気のせいと思っていたけど
この神殿に近づくごとに気怠くなってきた
ずっと続く倦怠感はただの慣れない旅の疲れだと思っていたけれど、宮殿に滞在するようになってその気怠さは強くなるばかりで少し歩いただけで足を休めてしまう
ふぅと息つきながら、石像の傍らに腰を下ろそうとすれば静寂に遠くも響く破壊音
それに続いて駆け足な足音がこちらに近づいてくる
まさか、こんな宮殿の中心地に賊!?
慌てて腰に差した刀の柄を握る
抜刀なんて、初めてだけれど自分の身くらいは守ろうと決めたんだ
覚悟を決めて、威力のなるべく軽い呪文を唱えながら待ち構えた