余徳
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「リナさん達大丈夫ですかね‥‥」


コレは下で繋がれているであろうゼルガディスさんの安否も心配になってくる


「あの、ガウリィさん噛み付かれていませんか?」

「えぇ、咥えられていますね」



い、痛そう‥‥。とても痛そうだ
寧ろ常人なら死んでるよ。あれ


「あ、ドラゴンへ乗り移りましたよ」

遠目だがアシュフォードさんがドラゴンの上へと乗り上げたのが分かった

ドラゴンはガウリイさんを開放し必死に邪魔者を振り払おうと体を辺りにぶつけ暴れまわる

アシュフォードさんはそんな衝撃のなかドラゴンの背をよじ登り、包丁を振り上げ突き刺した





ずしぃいいいんッ

「つぅ‥‥っ!」

ドラゴンが地に伏した震動がここまで届き不安定な木の上でその揺れを耐える


「す、すごいアシュフォードさん」


ほんとにドラゴンを倒しちゃった。あんな包丁ひとつで

「ほほぉー、大したもんです」

一緒に様子を見守っていた隣のゼロスさんも拍手を打って感心している



「さて、獲物を仕留めたようですし行きましょうか」

「あ、はい」


ほんとにゼロスさんは見守ってるだけだったな
なんて、思いつつゼロスさんが先に木からすっと飛び降り着地する姿を見る


「‥‥やっぱり高いな」

本当に身体能力のポテンシャルが違うなって実感する






「リオンさん、そのまま降りてきてください
僕が受け止めますから」

「ぇ‥‥っ!」


その言葉にぼんっと顔が赤くなる
いや、深い意味はないのはわかってるけど

と、殿方の腕の中に自分から飛び込むなんて

「浮遊で・・・っ
おおお、降りますんでっ」


慌てて呪文を唱えようとすると一陣の突風が体を浮かした

その浮遊感は一瞬のことで。

そのまま体が重力に従い急降下を始めた


「ひ、ひぃっ!!」


突然の出来事に可愛く叫ぶとこだろうが、そんな悠長なこと言ってらんない!
これから全身を襲うだろう衝撃に耐えるため両目を強く瞑った



ぽすっ


「ずぇ、ゼロスさんっ!?」


覚悟していた衝撃はこず、中肉中背の均等の採れた胸板に受け止められ事なきを得た


「うぁ、あの、あ、りがとうございます
出来れば早く降ろしてくだされば嬉しく‥‥!」

「照れていらっしゃるんですか?」

「いえ、慣れていないんです!殿方に!!」


だから、こうもあたふたしてしまうのも照れ以前の問題と言いたいわけで


「僕を意識してではないんですね。ザンネン」

「何をおっしゃ‥‥っ!?」

「いえ、反応がとても可愛らしかったので♪」



かああっと顔が赤くなる

この人のこうやって人をからかう癖はもう、こーゆうものなんだって納得してしまわないと

ずっと苦労するだろうな。

でも、慣れない


うああああ、武家の人間たるもの、精神統一を瞬時に行える精神力を養うべし。

そう、リオン。
これはからかわれてるだけ。精神統一


「大丈夫ですか?ぐるぐるしていらっしゃいますが」

「もう、大丈夫です」


百面相を終え、やっと開放してもらい久々に地に足をつけた

カチャ

何か、踏んだ?


足元の金属類を持ち上げるとそれはロケットのペンダントだった

かぱっと開けてみる

「あ。」

「ふふっ」

ゼロスさんも覗き込み小さく笑った

中を確かめるとリナさん達に瓜二つな、アシュフォードさん一家の写真が収まっていた───‥













ドラゴンの肉を店へと持ち帰り、調理を始めたアシュフォードさんから知らされた真実はリナさんには残酷だった




調理期間、半年



ドラゴンの生命力ってどんだけですか。

ここまでくると調理中に味が変質しないのが謎である

リナさんはさくっと食べられそうなものの調理方を挙げていくが、悉く少なくとも2ヶ月はかかるようで‥‥

死ぬと言われた生肉にかじりつこうとするリナさんをガウリイさん、アメリアさん、ゼルガディスさんが強制的に運びだして‥‥




「あたしの・・・あたしのドラゴン料理ぃ〜〜〜っ!!!」




リナさんの絶望の悲鳴によりこの事件は幕を閉じたのでした








◆余徳 −多けりゃいいってもんじゃない−


あり余る恵み。

あり余るドラゴンの肉。

あり余る魔力‥‥?



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