余徳
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これ以上魔法を覚えようとすると先が怖そうだけれど、やっぱり知りたい。

だが、これ以上ゼロスさんと関わるとリナさんの信用をなくしたりしないだろうか。



それでも、知識が欲しい。未知なるものに好奇心がどんどん膨れ上がっていく。

そんな私の葛藤を察してかゼロスさんは静かに私の様子を見守っている。






「ゼロスさん。浮遊(レビテーション)教えてください。」

「いいでしょう。」

私の選択に満足げに頷いたゼロスさんは私のもとに降りてきて風の精霊の魔法についてと浮遊の呪文を簡単に教えていった。



「これでいいんですか?」

「魔法の基礎の知識は昨日お教えしたので、これで十分なはずです。」


その基礎で試した基礎中の基礎の魔法はほぼ暴走状態だったんですけど‥‥

不安を隠せずもう一度ゼロスさんを見ても笑みを深くするだけで‥‥




えーい!やっちゃえ!

集中して、呪文を一語一句間違えず唱えて




「浮遊(レビテーション)!!」


ふわりっ



「う、浮いたぁっ!!!」


信じられない!引っ張られる感じじゃない。私が確かに“浮いてる”


「う、うわぁ‥‥っと」

浮いてる状態で体を真っ直ぐに保つのが案外難しく体制を崩してしまった。
魔法をまだ解いてないから地面にぶつかるわけじゃないけど、結構ビビる。これ。



それでもやっとまともに使えた初めての魔法!



「ゼロスさん!私浮いてますねっ」

ふわふわ浮きながらゼロスさんに近づく

「不安定ですけどお見事です♪」

「ありがとうございます。」


浮いた状態で中途半端なお辞儀をして先ほどまでゼロスさんのいた木の上へ浮上していく。




「うあ‥‥っ」


木の枝と同じ高さまで浮上し、木の枝に足をつけると再び重力が戻ってきたような感覚に思わず再び体勢を崩した




お、落ちる────‥!!


咄嗟に目を瞑るとぐいっと体の向く重力と反対方向に引っ張られ、足元が崩れたままとすっと柔らかい胸板に収まった



「あ、ありがとうございます!すみません!」


その胸板がゼロスさんの物だと瞬時に理解するとばっと完全にもたれ掛かっていた体勢を直し、落ちないように気をつけながらぺこぺこと頭をさげた。




ひゃー‥‥顔が熱い


胸板‥‥柔らかいけど、逞しかったというか‥‥何思い出してんの、変態か私


「あ、れ?」

さっきまでゼロスさん下にいたよね?

「わざわざ木の上まで駆けつけてくださりありがとうございました」


冷静に考えるとますます面倒かけてるなぁ…としみじみ感じ、改めて深々と木の枝の上に正座してお辞儀をした



「いやぁ〜リオンさんはリナさん達と違って木から落ちたらただでは済まないでしょうし、危ないところでしたね」

「リナさん達ならただですむんだ‥‥」


まぁ確かに既にアメリアさんの落下シーンは数多く見ている。

全て顔から着地するというなかなかデンジャラスながらもピンピンしている様子は初めは驚いたけれど、今では見慣れつつある


「リナさん達に比べると自分って本当にひ弱で申し訳なく思えてきます」

「いえ、それは人間として比較対象がまず問題かと」

「あ、やっぱりそこは問題なんですね」


ゼロスさんの言葉にリナさんたちに失礼だなと申し訳ない気持ちながらもくすくすと笑ってしまう





ザパーンッ



「!?」

「おや、かかったようですね」




慌てて湖畔へと視線を向ける

凄まじい勢いで水しぶきを上げながらドラゴンが暴れていて
ドラゴンを釣り上げようというシンプルな作戦だけれど、釣り糸として繋がれたロープで船が滅茶苦茶振り回されてる




‥‥乗り込まなくてよかった。




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