余徳
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「あんたも随分自分に素直になったじゃない」

「適応能力は人並みだと思っていたんですけど。やっぱり慣れた者勝ちでしょうか?」

「ま、そりゃあ‥‥そーだけど」


爽やかに問い返した私にリナさんが言葉を濁す

何かおかしな事を言っただろうか?

しばらくリナさんの顔を見つめるも、昨晩の話になりそうだなと思い返し、早々に話を切り上げることにした


「さあ、アメリアさんがお茶の準備を始めていますよ
私たちも行きましょう?」

「‥‥あんたねぇ‥‥そんな胡散臭い笑い方どこで覚えたのよ」


う、リナさんやっぱりスルドい。
話を誤魔化したのがバレバレかも‥‥


「まーまー、どこでだっていいじゃないですか!」

必死にリナさんを促してアメリアさん達の元へと進んでいく


まだレイクドラゴンはかかるわけ無いだろうし‥‥まず掛かるかどうかが心配だけど
取りあえず今くらいはゆっくりしたい



そんなこと考えながら湖畔に目を移せば


「あのなぁお前らッッ!!」

ずいぶんご立腹のゼルガディスさんが飛び出してきた
ロープを手繰りよせてって‥‥すごい根性です、けど‥‥


「先端。繋ぎ忘れちゃいました?」

「あれ?───‥‥うわあっ!!」


ロープの先端が船体のどこにも括りつけられていなかったみたいで
手繰り寄せていけば勿論、ロープは湖へと引っ張られていってしまうわけで。


ゼルガディスさんは再び湖の底へと姿を消してしまった。


うーん‥‥これは、まさしく沈み損。




あ、でもどうしてあんなにも怒っていたんだろう?
お茶会に参加でき無くて?ゼルガディスさんってお茶会がそんなに好きなのかな


「何か水音がしましたよ?」

お茶会中のアメリアさんはゼルガディスさんの音に気がついたらしい
取りあえずはリナさん達に先ほどのことを伝えましょっか


「アメリアさ‥‥」

お茶会中のみなさんに振り向くとそこで何か違和感。


「どうしましたか?みなさん」

よく見るとみんな一様に此方を驚愕の眼差しで見つめている。


それは私の背後へと向けられていて‥‥

ゼルガディスさんがまた何か無茶して上がってきたのかな、とそんな安直な考えで振り返れば‥‥




そこには獲物、こと

───レイクドラゴンの巨大な頭が。




「ぃっ!?」

「出たぁ───────っ!!」



リナさん達は絶叫と共にあたふたと甲板を右往左往と駆けずり回る

私はというと‥‥完璧に度肝を抜かれて茫然とレイクドラゴンを見上げていた


そうだ、昨日はウトウトしていて見逃したんだ!
こうして実物を見てみると‥‥大きい。ホントに大きい。

かなりの重量の巨体。
こんなもの食いつくすことなんて出来るのだろうか‥‥



‥‥って呑気に第一印象を考えてる暇ないよ。

動いてー!!私の足!!



きっとたぶん。一番ここの位置危ない気がする。
私の勘が、全神経が、いや、論理的に考えてもそうだって



完璧に竦み上がってしまっているみたいだ

向こうでアシュフォードさんとリナさんの会話が聞こえてくるけど、そちらに意識を向ける余裕もない。


ただ、私は、ドラゴンが尾を凄まじいスピードで振り落としてくるのを
他人事のようにただ、見つめていた。





そして、船は大破した。





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