余徳
(4/8)
bookmark



翌日。


朝靄漂う早朝
私たちは再び湖へと船で乗り出していた。






私と言うと昨日のことで少し寝不足。眠気を湛えたままの目を擦ってまず思ったのが


「ほんとにコレでいいんでしょうか?」

「いいんじゃないか?」


ガウリイさんの楽観的な返しに私は苦笑するしかない。
ああ‥‥不安が絶えない。


「リオンさん。顔色がよくないですけど大丈夫ですか?」

「大丈夫です。少し寝不足なだけで。ね?‥‥いや本当ですよ?」


どうしてか疑いの視線をぶつけられている気がする‥‥寝不足は本当なんだけどな。


実際問題。顔色が優れないのはそれだけじゃないんだけど


「‥‥リオンの気持ちもわからんことも無いがな」

私の気持ちを汲み取ってくれたのかゼルガディスさんは遠い目をしてこの船を見上げた。

その言葉にまたも苦笑する




そう。私の不安もこの仮装した‥‥にしてははりぼて感たっぷりの船にある。

作戦を考える際、アシュフォードさんの発案で獲物の気を引く為とレイクドラゴンを模して凝ったデザインに出来上がってしまっていた。

歪なのは言わずもがな‥‥あえて口を噤もう。




「今日はここいらに錨を下ろす!」

船の先端で堂々と宣言するアシュフォードさん。

途端にじっと私たちの中にいた“彼”に自然と視線が向けられた。
ずいっと囲む満面の笑みのリナさんとアメリアさんに諦めを悟ったのか静かに落胆の色を濃く見せた。


不意にこちらをじっと見つめてきた彼に、ひどい様だけど他人事と言わんばかりにエールを送る。


「こんな時は諦めが肝心ですよ。頑張ってくださいね?」


ぼしゃあんっ



「ぜーるーっ しっかりねぇー!」

そして彼は再び湖の底へと沈んでいった。



prev|next
[戻る]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -