*おまけ
『みなさんに祝っていただけて、とても嬉しかったです。』
帰ってきてからも、にこにこと笑みを浮かべる琴音に鬼灯も微笑む。
「そうですね。私もあそこまで祝っていただけるとは思いもしませんでした。」
『それだけ、鬼灯様が慕われていらっしゃるということですね。』
「そう…なんですかね。」
『そうに決まってますよ。でなければ、わざわざお祝いになんていらっしゃらないはずですもの。』
「だと嬉しいですね。」
鬼灯はそう言うと、真剣な表情で琴音を見つめる。
「ですが、私は家族というものを知りません。ですから、いい父親になれるかどうかは正直、分かりません。」
『鬼灯様…』
「けれど、あなたは家族というものを知っているでしょう。ですから、色々と教えてください。」
鬼灯の言葉に琴音は"はい"と返事すると、彼の手をとった。
『ですが、無理に"いい父親"になろうとなさらなくてもいいんですよ?』
「え…?」
『確かに私には家族がいますから、家族とはどういうものなのか知っています。ですが、私だって母親になるという経験は初めてです。 ですから、お互いに話し合ったりして助け合いながら、少しずつ父親と母親になっていきましょう。そうすれば、自然といい両親になれますよ。きっと。』
「琴音…」
"ね?"と笑う琴音を、鬼灯はぎゅっと抱き締めた。
「ありがとうございます。実は…少し不安だったんです。家族を知らない私が親になどなれるのかと。でも…そうですよね。お互い、初めての経験なんですよね。」
『はい、そうですよ。』
「今、やっとモヤモヤとしていた気持ちがなくなりました。」
『ふふっ、それならよかったです。』
そう言って自身の胸に頬を擦り寄せる琴音の髪を鬼灯は優しく撫でる。
「あなたは本当にすごいですね。」
『え…?』
「いつだって、私の不安を取り除いてくれる…あなたは私の光です。」
『それは私も同じですよ。私だって、いつも鬼灯様に助けていただいてますもの。』
「琴音…」
鬼灯は体を離すと、そっと彼女の頬に手を当てる。
「これからも、お互いに支え合っていきましょう。ずっと、私のそばにいてください。」
『はい…鬼灯様』
それから鬼灯がゆっくりと琴音に顔を近づけた瞬間――
「「おぎゃあぁぁ!!」」
「『!!』」
眠っていたはずの双子が起きてしまったのか、泣き始めた。
その声に2人はお互いを見つめると、苦笑いを浮かべる。
そして立ち上がると、ベビーベッドへと向かった。
『どうしました?怖い夢でも見ましたか?』
優しく声をかけ、双子をあやす琴音に、鬼灯もそっと双子の頭を撫でる。
「大丈夫ですよ。私たちはここにいますからね。」
と、次の瞬間――
"ちゅ"
「!!」
鬼灯は頬に触れた柔らかな感触に、隣にいる琴音に視線を移す。
見ると、琴音は少し頬を赤く染めながらこちらを見ていた。
「琴音?」
『さっき…できなかったので、今はこれで許してくださいね。でも、この子たちが眠ったら…』
そこまで言うと、琴音は背伸びをし、鬼灯の耳元に唇を寄せる。
『鬼灯様から、さっきの続き、してくださいね?』
「!!」
恥ずかしがりやの琴音の意外な発言に鬼灯は目を見開いたが、すぐにニヤリと口角をあげる。
「言いましたね…約束ですよ?」
鬼灯の言葉にこくりとうなずく琴音。
それを確認すると、鬼灯は双子に視線を移す。
「ほら、もう早く寝てください。ここからは夫婦の時間なのですから。」
子供相手にそんなことを言う鬼灯に苦笑しつつ、琴音は彼の肩に軽くもたれるように頭を預けたのだった。
END*
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