カーテン越しの朝日が優しく、やわらかく私を目覚めさせた。同時にぼんやりと霞む頭に大好きな人の声が降ってくる。
「…ん…」
「ごめん、起こした?」
「…のり あき」
開いたばかりの曖昧な視界に飛び込んできたのは、隣で寝ていた典明。腕を伸ばせば暖かなぬくもりを感じられる幸せ。
「おはよう」
「…おはよ、典明」
ピピピ、と近くのテーブルから鳴る電子音。何時に目覚まし時計を設定したっけ。私じゃあない、典明が設定したんだっけ?考えるつもりのない思考は疑問だけを生み出して。
「何時?」
「ん、8時」
「そっか…」
欠伸を噛み締めてもう一度目蓋を閉じる。このままでいたら、すぐに夢の世界に引き戻されそう。うとうとしていれば典明からはくすりと笑みがこぼれた。
「今日は寝て過ごす?」
目を閉じていても差し込む日差しが心地良い。けれども、声だけの彼に不安になって目蓋を開いた。
あなたがいない、世界が恐い。
「…ううん、起きるよ」
「無理してない?」
「…?」
「すごい眠そうな顔してる」
「うそ」
「じゃあ…もう少しだけ寝ようか、」
「…せっかくの休日よ?」
「たまにはのんびりしたって、ね」
そう言って典明は起こしていた上半身を再びベッドへと埋め、私をぎゅうと抱き締めた。
「これで寂しくない」
「……うん」
私が微笑むと、典明も目を細める。
(典明も、私と同じように思ってくれてるのかな)
「おやすみ、夢子」
「ん、…おやすみなさい」
つい先刻起きたばかりなのに、またおやすみだなんて可笑しいなと思ったけれど、どうでも良いやとあなたに寄り添う。
再びこの瞳に映すのがまた、大切な人であるように。
ささやかな願いを呟き、瞳を閉じた。
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まとも院(090118)