※花京院が空条家に運ばれた後
「スタンド使いは引かれ合う…」
横たわる男の隣に正座をして、夢子はぽつりと呟いた。
最近、スタンドなるものの力を得た承太郎、そして夢子。ジョセフから話は聞いていたが、早くも承太郎はスタンド使いであるこの男――花京院と言っていた――と遭遇、学校の保健室を盛大に破壊しながら一戦交えることになってしまった。二人が生死に係わる怪我をせずに済んだのは良かったが、瓦礫だらけになってしまった保健室は果たしてどうなったのだろう。夢子は意外にもそんなことを考えていた。
「夢子」
「承太郎…」
ス、と開いた襖から長身が現れる。窓から風が吹き抜けて、彼の学生服がひらりと揺れた。
居間ではジョセフとアヴドゥル、そして承太郎がこの先の事について話し合っていたはずだが、それが終わったのだろうか。
「私、居間に行くね」
部屋に入り、未だ目覚めぬ花京院を見下ろす承太郎。その精悍な横顔を見、夢子は立ち上がり部屋を後にしようとする。
「……どうしたの」
背を向けると腕を掴まれた。それをしたのは紛れも無く承太郎で、夢子は小首を傾げる。その表情は馴染みの学生帽が邪魔をして見えない。
「な…、…?」
承太郎は無言で腕を引き、更には腰を引き寄せる。視線が近付いてくるのはゆっくりなのに、夢子は不思議がって抵抗するのも忘れていた。
細められた深緑の瞳が、妙な色香を持ちながら夢子を見つめ。
「じょ、…」
その瞳の虜になっていると、噛み付くようなキスに襲われた。
「ん…んっ」
呼吸の準備―心もだが―をしていなかった彼女は酸素を取り込もうと唇を開く。するとすぐにぬるりとした舌が滑り込み夢子はびくりと跳ねた。捕らえられた舌を蹂躙されると同時に、自らが漏らす途切れ途切れの吐息。
すぐそこには花京院が横たわっているというのに。いつ意識を取り戻してもおかしくはないというのに。全てが夢子を羞恥に追いやった。
「――…は…」
唇が離れて直ぐ様、夢子は酸素を取り入れる。肩で息をしながら、つい先程まで重ね合わせていた唇に触れ。夢子の表情こそ俯いて見えないが、その髪から覗く耳は真っ赤になっていた。
「…消毒だ」
「っしょうどく…?」
意味が解らないといった具合で控えめに顔を上げた瞬間、夢子は大きく引かれ承太郎の胸にぶつかる。
恥ずかしいはずなのに、大好きな彼の香りが彼女をひどく落ち着かせた。
「保健医とキスしちまったからな」
「……え」
予想もつかなかった返答に思わず深刻な声が漏れてしまう。彼を押し退かそうとするも、背に回った大きな掌に負けてしまい。
「全部この野郎のせいだぜ」
「か、花京院くん?」
承太郎の話によれば、保健医の体内に入ってしまった花京院のスタンドを取り出す為、だったようで。なんで俺があんな女と。少なからず承太郎は彼に対する怒りがあるようだった。
「…だからよ」
彼はキスをする寸前の体勢をとると、低い声で夢子の鼓膜を叩く。小さく「だめだよ、」と呟くが、承太郎は全く聞く耳を持っていなかった。
「こいつが目を覚ましたら見せ付けてやる。…俺とてめーの仲をな」
視界が暗くなり、不敵に笑んだ唇が重なる。
キスの雨は、止みそうにない。
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捏造しまくり
(081111)