「い、」

ぴりぴりと走る痛みに、ユメコは顔を歪めた。いくら怪我の手当とはいえ彼女はこのアルコール、消毒液が苦手でたまらないのだ。

「安心しましたよ。この程度の傷で帰ってこられて」
「そうだよね…何とか逃げて、っん」
「…我慢して下さい」

幸い、それほど深い傷ではなかったのでジョルノの再生能力は必要でなかった。けれども先程からユメコは、滲みる消毒液に浅く傷付いた腕を引っ込めてしまう。そうしてはジョルノが我慢して、と手首を引っ張るのだった。同い年なのに、まるで大人と子供のような二人のやりとり。

「腕は大丈夫でしょう。さ、脚を見せて」
「あ、脚はいいよ!自分で出来る…」
「……消毒嫌いのあなただから言っているんですよ」

半ば強引に、擦り傷の浮かぶ太股に消毒液を染み込ませたコットンを宛てると、ユメコの身体はその痛みに跳びはねる。

「ひ、いぃっ、!」

二人掛けソファの隅に背をぴたりと張り付けて、手当を受けていない片足をばたばたと動かし。ギャングともいう人が、と呆れながらもジョルノは丁寧に手当をしてやる。

「しかし木から落ちるとは…」
「う、うるさいわね!ちょっと足を滑らせただけだもの…」

自分の失態に、ふいと顔を背けるユメコ。そして消毒を終えて顔を上げたジョルノは彼女の顔を見て、ある事に気付いた。

「…ユメコ、少し目を閉じて」
「え?」
「いいから、閉じて下さい」
「な、何よ…」

突然そう言い出されて当然ユメコは戸惑う。けれども目をぱちくりとしている間に、ジョルノの大きな掌で視界を閉ざされてしまった。目を閉じる――もしかしてジョルノは…。そう考えている内に降ってくる「閉じました?」という大人びた声。

「…うん…」
「そのまま、じっとしていて…」

言う通りに従うと、次に両手で頬が包まれた。ユメコはばくばくと徐々に高鳴る鼓動を抑えようと、膝の上できゅっと拳を握る。
ギシ。ジョルノが身を乗り出してソファが軋む。案の定、二人の距離が縮まった。

「…………!!」

柔らかな感触。唇に触れるであろうと思っていたジョルノのそれは、身構えていたユメコの瞼に落とされそして、舐められた。

「な…!?」
「消毒ですよ、ここの」

そう言って自分の瞼を指差す。言われるまで自身は気付いていなかったようで、瞼に触れて初めて薄い切り傷が出来ていた事に気付くのだった。

「…目元に消毒は危険…ですし」

ユメコが唖然としているのを良いことにジョルノは小さな身体を引き寄せる。

「それとも期待してました?」
「そっ、そんなこと!」
「…本当ですか?」
「え……っ」
「僕の目を、見て」

互いの距離が数センチ、というところで絡み合う視線。辺りは無音になり注意を逸らすものは、何もない。
真っ直ぐなジョルノの瞳にいたたまれなくなって、諦めからかユメコは彼を映したままゆっくり、ゆっくりと瞼を下ろした。

「そう…いい子です、ユメコ」

甘い口付けまで、あともう少し。

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多分初めて書いたジョジョゆめ(081022)
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