AM9:00

珍しく承太郎が甘えたように首へ顔を埋めてきた。時計を見れば短針は9を指すところで、いくら休日と言えどもそろそろ起きなくてはいけない時間だった。

「…承太郎、もう9時」
「……」

まだ夢の中にいるのだろうか。大きな体は少し動いただけで、返事は無い。夢子とてこのまま寝ていたいのは山々だった。しかしここで本能の赴くままに寝てしまえば、せっかくの週末を無駄にしてしまうのが目に見えている。なんとか目を覚まそうと、夢子はそっと体をずらし上半身を起こしてみる…が。

「…、っ」

気怠い肉体は力が抜けたように、ゆるゆると再びシーツのぬくもりへと肌を預ける。シャンプーの香りが残る枕にぼふっと顔を沈めて昨夜のことを一人後悔していると、あたかも図ったかのように隣の男の瞼がすっと上がった。

「夢子」

柔らかな体をぐいと引き寄せ、ぼんやりと名前を呟いたかと思えば、承太郎の大きな手はつうっと太股をなぞり上げる。反射的に夢子が声を出せば、くつりと笑う声。まさか、最初から起きていた、のか。

「ちょ、ちょっと、寝ぼけてる…?」
「そうだと思うか?」

そう言うと、のそりと起きた承太郎はあっという間に手首を押さえ付け夢子を見下ろす。つまり、覆い被さる体勢になった。夢子はといえば目覚めたばかりとは思えない深緑を睨み、そしてその口から零れるのは明らかに不機嫌な声。

「…私、体が痛いんだけど」
「そーか」
「そーか、じゃあなくて承太郎の…っ」

抗議をすれば、それを飲み込むような深いキス。まるで昨夜の熱を鮮明に思い出させるような口付けは、完全に働いていない彼女の思考を更に鈍らせる。
唇が自由になると馬鹿だの何だの言葉を一気に投げてやるが、今度は耳元に顔を寄せる承太郎は、そんなことを気に留める様子なんてかけらも無かった。

「今度はやさしくする」

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(110824)
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