「「あ」」
カバンを取りに教室へ戻ったら、仗助くんがいた。驚いて声を出したら向こうも同じだったらしくタイミング良く私の声と重なった。…というか、何でいるんだろう!今日は面倒な委員会が長引いたから教室には誰もいないはずなのに。しかもよりにもよって、仗助くんなんて。
「よ、よォ…えーっと、委員会か?」
ぎこちなさすぎるッ!委員会って知ってたからなぁ。億泰の野郎は死にそうな顔で腹壊したとか言って早退しちまったし、康一は由花子とデート。今日は久しぶりに一人になったからちょっぴり期待をして夢子を待ってみたんだが、二人っきりって…グレート。
「うん、今日は少し長引いちゃって…。仗助くんは?」
机に腰掛けている姿はいつもクラスで見慣れているのに、夕日の色味と影が重なった仗助くんはとても大人っぽくて、つい見とれてしまう。かっこいいなぁ。そりゃあ女の子たちも騒ぐよね。
「あーいや、ちょっと用事があってよ」
咄嗟に適当なことを口にしてみるが夢子は特に掘り下げるわけでもなくそうなんだ、と机に引っ掛けてあったカバンを手にした。白い手だ。いつ見ても小さくて、柔らかそうな…今なら吉良の気持ちが分かるかもしれねえ。
「その用事、まだある、の?」
良ければ一緒に校門まで…ってそんなこと、いきなり自分から切り出せない。だからあくまでも普通に会話を続けるように、切り出してみる。まだ残るならまた明日ね、バイバイって言えばいいだけだもの。
「いや……あの、ちょうど帰ろうとしてた所でよ、良かったら一緒に帰らねーか」
このために待ってたんだ、じゃあまた明日なんて終わらせてたまるかッ!どうやったら夢子を自然に、いやらしくなく誘えるか?待ってる間に頭ン中でシミュレーションしてたんだぜこの仗助くんはよォーッ!
「う、うん!」
……確かに良かったら、なんてひっそりと考えてたけどまさか本当に帰れるなんて。聞き間違いじゃあない、よね。きっと時間遅いからって誘ってくれたんだろうな。仗助くんって見た目は怖いけど笑ったら結構カワイイし、誰にでも隔てなく優しいから…ああ、こうでも考えていないと嬉しくてどうにかなっちゃいそう!
「えーっと…じゃあ、帰るか」
カバンを握る手がやたら熱い。俺の隣に少し離れて夢子がついて来る。こうしてりゃあ端からみたら、こ、恋人同士に見えなくも、なかったり…っつーか、二人でゆっくり話すってのも初めてじゃあねえの?ヤバい、緊張するなァ。…っと、よし、ゆっくり歩こ。
さてさて何から話そうか!
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硬派なのに純情派の仗助が好き(110505)