■ C
一番奥の後ろを陣取っているカレ等総長を含めた特攻の周りはいつもテーブル一個分空いているけれど、誰も座ることなどなかった。
こっちに顔を向けて座っているのは、総長の恋人である奈々を囲むように、両サイドに友樹と大輔くん。
その前、わたし達に背を向けて座っているのが、真ん中にゆきみを挟むように座る、拓真と和也くん。
わたしはその後ろ姿を見るのが好きだった。
「ユカリも今日の走り行きたい?」
ジッと和也くんを見つめてうどんを食べていたわたしに、沙和の彼氏のミツルくんがそう聞いた。
和也くんの背中に集中していたわたしは、一瞬何のことか?頭が働かなかったものの、「ちょっとやめなさいよ」って言う沙和の声に、目をパチクリを動かした。
「いいじゃん、俺のダチに頼んで後ろ乗せてあげられるよ?」
「ほ、ほんと?」
「本当、本当。行く?」
「行きたい!」
呆れ顔の沙和を置いて、わたしとミツルくんの話は進んでいく。
「和也さんに近付くことは無理だけど、一緒に走るくらいできるからさ」
夢に描いていたその世界を、一目でも見れると思うと、嬉しくて溜まらなかった。
元々、彼氏がoneだから沙和と仲良くなったわけじゃなく、偶然にも仲良くなった沙和の彼氏がoneだったというだけ。
でも今のわたしからしたら、それはもう…―――
「運命かも…」
「え?ユカリ?」
「和也くんと接触できるかも…」
「いや、接触は無理だと思うけど…。そもそもユカリは同じクラスなんだから話しかけりゃいいんじゃねぇの?」
それは、そうなんだけど。
夢見る乙女の分際で、かなりのチキンだってことにわたしも自分で呆れているところで。
お姉ちゃんが、学生の頃の恋愛なんて勢いだけよ…って言った言葉を、既に疑っている。
真っ赤な髪を揺らしてゆきみに微笑む和也くんの横顔をわたしはひたすら見つめる。
「ミツルくん、ありがとう」
「聞いてねぇし…」
そんな浮かれたわたしに、天罰の如く、まるで和也くんに「近付くな」と言われたような出来事が待っているなんて、思いもよらなかったんだ。
ただ、和也くんと仲良くなりたいってわたしの願いが叶うことは、あるんだろうか…―――