■ C
「ごめんさない。でもこうしたかったの…。怒られるのはわたしだけにしてもらうから、二人には迷惑かけないよ」
「あんたってバカ!」
急に沙和が泣きそうな顔でわたしを抱きしめた。
フワっと甘い沙和の香りがして、ちょっと心地いい。
「沙和?」
「そんなに和也さんが好きなの?ツヨシじゃダメなの?」
「え?ツヨシ?」
まさかのツヨシが出てくるなんて思いもしなくて、わたしは沙和の顔を覗き込む。
唇を噛み締めて思いつめたような沙和の顔に、わたしは何といえばいいのか分からなくて…
「ごめん、ツヨシは忘れて」
そう続いた。
「うん、分かったけど…和也くんへの気持ちは変えられないよ…」
「…分かってる。ユカリにミツルを紹介した時点で覚悟してた。でもユカリはあたしにとって唯一の友達だから…だから、突き放すようなこと言わないでよ。怒られるぐらいあたしだって一緒にするよ」
「…沙和…ありがとう」
「まぁそーいうことだ」
ポンって今度はミツルくん。
わたしの髪を優しく撫でた。
「それ、似合ってんぞ」
「ありがとう、ミツルくん」
わたしが笑うと、フッて顔を逸らしたミツルくんは、「あちぃ」って言って、指でパタパタと空を仰いだ。
二人の優しさが嬉しくて、改めてこの二人が側にいてくれてよかったと思わずにはいられない。