■ J


「ユカリ連れてきたの?」


「…はい」


「…そうなんだ」


「ゆきみさん?」


「なに?」


「あの俺…」


「うん?」


「いや…その…」


「無事でよかったよ、ユカリが。ツヨシは大丈夫なの?」


「たぶん」




どうして和也くん、敬語なんだろう?

呼び捨てもしてないし。


そんな和也くんの事情が分かるわけもなく、わたしを見つめていたゆきみの視線が離れていく。

向かっているのはVIPで、歩いていくゆきみを追って和也くんが腕を引いた。

足が止まったゆきみに、聞こえるのは沢山のバイク音。


その音に反応するかのようにゆきみが和也くんの腕を離して、走って行く。




「拓真、帰りたい」




ギュってセカンド拓真の腕に巻き付いているゆきみは、どうしてか元気がないように見えて…―――



拓真は和也くんをジロっと睨むと、それからやああってゆきみの髪をスッと撫でた。

顔を覗き込んで優しく微笑む拓真は、文句なしにかっこいい。




「疲れたか?」




聞きだす声も優しい。

ゆきみは甘えるみたいに拓真を見上げながらも頷いて…






- 59 -

prev / next

[TOP]