■ J
「ユカリ連れてきたの?」
「…はい」
「…そうなんだ」
「ゆきみさん?」
「なに?」
「あの俺…」
「うん?」
「いや…その…」
「無事でよかったよ、ユカリが。ツヨシは大丈夫なの?」
「たぶん」
どうして和也くん、敬語なんだろう?
呼び捨てもしてないし。
そんな和也くんの事情が分かるわけもなく、わたしを見つめていたゆきみの視線が離れていく。
向かっているのはVIPで、歩いていくゆきみを追って和也くんが腕を引いた。
足が止まったゆきみに、聞こえるのは沢山のバイク音。
その音に反応するかのようにゆきみが和也くんの腕を離して、走って行く。
「拓真、帰りたい」
ギュってセカンド拓真の腕に巻き付いているゆきみは、どうしてか元気がないように見えて…―――
拓真は和也くんをジロっと睨むと、それからやああってゆきみの髪をスッと撫でた。
顔を覗き込んで優しく微笑む拓真は、文句なしにかっこいい。
「疲れたか?」
聞きだす声も優しい。
ゆきみは甘えるみたいに拓真を見上げながらも頷いて…