■ I
「楽しみですねっ」
「…そうだな」
クシャ…って、和也くんの手がわたしの解けた長い髪を撫でた。
キュンってする。
こんな風にわたしに笑いかけてくれるなんて、嬉しすぎる。
完全に舞い上がっていたんだ。
でもそれが和也くんを苦しめることになるなんて、気づきもしなくて…―――
だからそのクシャって仕草が、ツヨシの癖だと思い込んでいたわたしは、そうとうのバカ女なんだって。
「和也?」
聞こえたのは綺麗なソプラノボイス。
わたしと和也くんを見て、不思議そうに首を傾げている。
あっという間にわたしから離れてゆきみに駆け寄る和也くん。
当たり前ともいえるその行動に、わたしは少しだけ切なくなった。
「喧嘩、大丈夫だったの?拓真様子見に行ったけど、戻ってたんだ和也」
「あ…うん」
気まずそうに言葉を発する和也くんに、ゆきみの視線が飛んでくる。