■ H
「はい、すみませんでした」
「別にお前のせいじゃねぇ。あの道を選んだ俺のミスだ、悪かったな」
「そんな、和也くんは悪くないですっ!」
何のフォローにもならない言葉しか出てこなくて…
「変な奴だな、お前」
そう言って、ほんの少しだけ口端を緩めた。
初めてわたしに対してそんな顔を向けてくれて…
平行線だと思っていた恋の道が、ほんの少し緩くなったと思いたい。
それはあくまでわたしの願望に過ぎなくて、実際は何も変わっていない平行線を、緩まったと勘違いしてしまうのは、単なる恋愛経験の無さからくるものなのかもしれない。
「和也くん、明日の花火は行きますか?」
「…は?」
「花火大会、明日行きますか?」
「あぁ、うん」
「わたしも行きます!」
「…そ」
「はいっ!和也くんに見立てていただいた浴衣着て、行きます!」
「別に俺が見立てたわけじゃねぇだろ」
「いえっ、和也くんの意見を参考にしました」
「あっそ」