■ F
「ふざけんなっ!オレの女に触るんじゃねぇっ!!」
怒鳴り散らすツヨシは、両腕を捕まれて、三人に囲まれている。
行き止まりのそこでは、すでに何台ものバイクが停まって、何人もの人達が喧嘩をしている。
こんな光景想像すらしていなくて、わたしは「離してっ!」掴まれた腕を懸命に振り払おうとする。
でも、所詮男の腕力に敵うはずもなく、ただ振り乱れるだけで、気づいた時には緩く編みこんでいた髪もとれてしまっていた。
ロングヘアーのわたしを見て、喧嘩の輪の中から聞こえた「ゆきみさんっ!」って声に、その辺にいた不良どもがわたしを見入る。
ツヨシに助けを求めようも、三人相手に喧嘩しているから入っていけるわけもなく、わたしを掴んでいる奴がわたしの顎をクイっと持ち上げた。
「お前、拓真の女かよ?」
「違っ…」
バキッ!!
って音がしたと思ったら、わたしの前にいたその人、カクンって膝をついて地面にぶっ倒れた。
「ひゃあっ」
声をあげたわたしの腕、グイっと掴まれてつれて行かれる。
目の前で強く腕を引くのは、真っ赤な髪の和也くん。
近場にあったバイクに足をかけて、わたしを強引に後部座席に抱き上げた。
そのまま自分もバイクに跨ってエンジンをかける。
ツヨシとは比較にもならない物凄いスピードで、バイクを走らせる。
ただ落ちないように、和也くんにしがみついていたんだ。