■ B
「和也の後ろ、乗りたいな〜」
ロングの真っ赤な髪をなびかせて、和也くんの隣に座っているのは、拓真の恋人のゆきみ。
煙草の煙がゆきみの方にいかないように、顔を背けて吐き出す和也くんは、嬉しそうに微笑んでいる。
スッとその手をゆきみの髪に触れさせて…―――
「拓真さんに内緒で二人きりになりに行く? 連れてってやるよ、ゆきみが望むなら」
「和也って誰にでもそんなこと言ってるの?」
「まさか!俺正直だからゆきみにしか言わねぇよ」
「ならよかった」
思わせぶりなゆきみの言葉に、目を大きくして固まってる和也くん。
地面を指でなぞってハートを書いているゆきみの手を和也くんが握って…
「ゆきみ?」
「うん?」
「今のって…?」
「だって、そんなこと言われたら勘違いしちゃうでしょ。その被害者がわたしだけでよかったって意味」
くすってゆきみは笑った。
ほんのちょっとだけ余裕そうな顔で。
和也くんは困ったように眉毛を下げて、煙草を口に含んだ。
また、反対側を向いて煙を吐き出す。