■ A



「ゆきみさん、オレが行くって言ってんのに、面倒でしょう?」


「いいじゃん。一年生可愛いんだもん」


「拓真さん嫌な顔してない?」


「分かんない。拓真が起きる前に教室出るから」


「…それオレとばっちり受けるじゃん」


「だって和也に早く会いたかったんだもん」


「……ゆきみ」


「わぁっ!!」





堪えきれず…って感じに、カレの腕が彼女を掴まえて、その腕に抱きしめる。

公衆の面前だろうが、誰がいようが関係ない。

カレ等を取り巻くファン達の前であろうと堂々とその愛情をゆきみだけに注ぐ和也くん。


顔を赤くして、ゆきみの長い髪に指を差し込んで強く抱きしめる。





「心臓痛てぇ…ゆきみのせいで」




…キュンってしたのか、和也くん。

そりゃそうだよね。


誰だって自分の好きな人に「早く会いたかった」なんて言われたら嬉しいに決まっている。


わたしだって、和也くんにそんなこと言われたら、失神するかもしれない。


そんな悲しい妄想は妄想に過ぎなくて、和也くんがわたしに「会いたい」と言うことなんて一生ないんだろうなぁ…。


小さくタメ息をついたわたしに、抱きしめられているゆきみの視線が飛んできた。





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