■ B



ちょうどサマーセール中で、特設会場には水着と浴衣フェアが開催されている。

わたしも沙和も夢中で選んでしまう。

やっぱり女のストレス発散って買物なんじゃないだろうか?ってくらいに。


ミツルくんとかっこつけてベンチに座って煙草を吸っていたツヨシの手を引いて、わたしは無理やり買物に付きあわせているものの、ツヨシはそれでもわたしの意見にちゃんと耳を傾けてくれる優しい奴。

ミツルくんが連れてきてくれたのがツヨシでよかったって、本当に思う。




「どっちもダメだろ」




思わぬダメだしにわたしはキョトンとした顔を崩してツヨシを睨んだ。

そんなわたしに又、あの大きな手がフワっと触れて…




「なんだよその色。お前はこっち、オレはこっちのがいい」




…――ゆきみならきっと淡いパステルカラーを選ぶんだろうな…なんて思って、わたしが手にしていたのは、淡いピンクと、淡いパープル。


どちらも可愛らしいけど、ツヨシが手にしたのは至ってシンプル、紺色に金魚柄の子供っぽい浴衣。


これじゃあ、幼稚園のお遊戯会みたいじゃない。


ブスっとしているわたしの頭をスッと撫でた瞬間、この辺一体空気がガラっとダークになった気がした。


ザワつく店内に姿を見せたのは、やっぱりなoneの特攻メンバー+姫二人。




「奈々すごーい!どれも可愛く見えるねっ!」


「本当、ね、選ぼう!」


「うんうん、拓真は何色が好き?」


「ゆきみさんなら何でも似合うよ」


「おい和也、お前には聞いてねぇぞ」


「あはは、男は座ってて〜、奈々行こう!」




…奈々の手を引いて、ゆきみは浴衣が溢れる中心部へと行ってしまった。






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