■ A




一年F組。
窓際の席で赤い髪を腕に預けて、机に伏せって寝ているのはわたしが好きな和也くん。


和也くんが寝ていることをいいことに、わたしは授業中だというのに、しっかりと視線を和也くんに向けていた。


残念なことに、この高校で勉学に励む生徒は一人としていない。


まるでTVでよく見る大学の講義を受けているように、淡々と一人で授業を進める先生達。


一日の半分は自習になるこの高校を選んだわたしは、金曜日以降中学の時の友達からメールが頻繁に届いているという異常事態になっていた。


それもそのはず、金曜の夜、わたしは暴走族デビューを果たした。



和也くんを好きになったことは、仲の良い友達ならみんな知っていたけれど、まさかのわたしが暴走に参加するなんてこと、誰も想像していなかっただろう。


だからか、どこから嗅ぎ付けたのかは分からないけれど、わたしを心配しながらもoneの面子に会わせて欲しい的な文章がちらほらと垣間見えて、どうにも返信をする気分になれなかった。


別に独り占めしたいとかそんなすれた性格っていうわけでもなく…


友達に話せるような綺麗な内容でもない。



和也くんに言われた言葉が悲しくもわたしの頭の中をグルグル回っていて。


同じ教室内にいて、こんなに近くなのに、その距離は果てしなく遠い気がしてしまうんだ。


あの場所に行けば行くほど、和也くんとは住む世界が違うんだと思ってしまいそうだった。





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