■ C
「そんなに怖えぇならもう来んじゃねぇ、お前」
わたしを抱きしめるツヨシの腕が強くなったと思ったら、聞こえた低い声に身体がビクっと震えた。
ゆっくりわたしを解くツヨシの腕の中のわたしをジッと見下ろしている和也くん。
「和也さん、それはこいつには言わないでって」
「うるせえ、ツヨシ!」
「…ッ…」
「お前みたいな優等生が来るような場所じゃねぇよ、ここは…」
わたしを支えるツヨシの腕に力が入る。
さも、わたしを守っているとでもいうかのように。
目の前で和也くんが冷めた目でわたしを見ていて、もう来るな!って言われるなんて思いもしなくて…
「わたし優等生なんかじゃないですっ!怖くなんか、ないですっ!」
勢いずいて口から出た言葉に、和也くんの目つきがいっそう怖くなる。
でも引けない!
わたしを守ってくれてるツヨシにも悪いし、ここにわたしを連れてきてくれたミツルくんや沙和にだって、申し訳ない。
それに、こんなことで和也くんを諦めることは、できない!
「ツヨシ、ちゃんとしつけとけ」
「…――はい」
唇を噛み締めて低く返事をしたツヨシ。
和也くんはもう何も言わずに、わたしを見ることもなく行ってしまった。
大きな銀色のバイクに跨ると、そのままメットもつけずにこの青い倉庫の中からいなくなった。