■ D
「とりあえず、座ってろ。今迎え呼ぶから…」
そう言うと和也くんは、物置を閉めて、そこにわたしの背中を預けた。
されるがままに深呼吸を繰り返すわたしに、「ちょっと待ってろ」って言葉を残して、小走りでどこかへ行ってしまった。
追いかける元気のない自分が情けなくて、せっかく和也くんと二人きりなのに、こんなこと学校じゃ有り得ないし、優しかった。
チームの中にいる和也くんは、心を開いているせいか、普段学校で見せる近寄るなオーラを半分くらい消している気がする。
わたしにだって、話しかけてくれて…
そっと目を閉じると聞こえてくる足音。
「飲めよ」
そう言われて、頬にピタっと冷たい感触。
目を開けたわたしに、ポカリを差し出している和也くん。
「あの…」
「気分悪りぃんだろ? 飲めそうなら飲んどけ」
「お金…」
「いらねぇよ!」
「でも…」
「煩せぇな、黙って飲んどけ」
「…優しいんですね」
そう言ったわたしの問いかけには、答えてくれなかった。
でも、蓋を開けてくれた和也くんの瞳は、やっぱりいつもより優しくて、わたしはポカリを一口だけ飲んで、意識を手放した。