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朝一番。
ツヨシにバイクで送って貰っていつもわたしは一番に教室につく。
来たり来なかったりだった和也くんは、ここ数日毎日学校に来ていて。
それが、ゆきみと一緒だからだって気づくのにそうかからなかった。
授業なんてあってないようなもので、出席日数だけとっていれば卒業はできるであろううちの高校。
勿論授業はほぼ毎日「自習」って黒板に書かれていて。
だから学校にいる生徒はみんな好き勝手やっている。
そう…―――私のクラスには毎日ゆきみが顔を出していた。
「ツヨシげんき?」
和也くんの机の上に座っているゆきみが斜め後ろの席のわたしに向ってそんな質問を飛ばした。
学校の違うツヨシは当たり前にここにはいなくて。
だから彼女であるわたしに聞いたんだって。
まさか和也くんの前でそんな質問をされるなんて思ってもみなくて…『はい…』小さく答えたらそれまでゆきみを見ていたであろう和也くんの視線が飛んできた。
「髪、黒のが似合うよ、ユカリ」
そう言うゆきみ。
今も拓真と同じ赤い色の髪で。
勿論和也くんも同じ赤い髪。
『すいませんでした…』
きっと夏の出来事を言っているんだってそう思った。
わたしの勝手な恋心で赤に染めた髪を。少なからずいい気分じゃなかったんだって。
「違うよユカリ。わたしのせいでごめんね…』
だから、突然そう言ったゆきみに思わず顔を上げて視線を合わせた。
真っ直ぐにわたしを見ているゆきみを、和也くんの手がギュっと握りしめている。
『え、あの…』
「ユカリが少しだけわたしに似てるからって…色々嫌なことあったでしょ?だからごめんね」
「ゆきみ、それ以上は…」
ゆきみの言葉に被せるようにそう言う和也くんだけれど…
ゆきみはその手を離してポカって軽く和也くんの肩を殴る。
「チームの男はいつも肝心なこと隠すでしょ…ユカリにだって知る権利はあるよね?ツヨシの彼女なんだから」
江美佳のことだろうか…。
あれはわたしの不注意で、ゆきみのせいなんかじゃないのに。
何も言えないわたしから目を逸らすと、今度は和也くんを見つめて言ったんだ。
「和也はわたしに隠しごとしてない?」
ドキリとするような声で。
机に乗ってるゆきみの手を引いて屈むゆきみの首に腕を回すと、そのまままるでここに二人っきりかのよう…―――――キスをした。
「するわけねぇだろ俺が」
離れた唇がそう言って。
真っ赤になっているゆきみを見て満足そうに微笑む和也くん。
「…もう。ユカリがいるのに…」
「関係ねぇよ、誰がいようと…」
そう言ってまたキスを迫る和也くん。
さすがに恥ずかしかったのか、机から下りたゆきみは「ここじゃしない」そう言って和也くんの手を引いて教室から出て行ってしまった。