■ B
放課後になり、いつも通りツヨシがわたしを迎えに来て。
いつも通りツヨシのバイクの後ろに乗ってそのままツヨシの家に直行するものかと思っていた。
でも、ツヨシが向かっていた方向は自宅じゃなくて…
何となく景色が懐かしくなってきた頃、どこに向かっているのかがハッキリと分かったんだった。
だからなのか、わたしの心臓は吃驚なくらいにバクバクしていて…。
大きくエンジンをふかしてバイクを停めたツヨシを見てわたしは『どうしたの?』そう聞いたんだ。
「そろそろ来てもいいって…許された」
…今更だと思った。
和也くんを好きな気持ちがない今はもう、わたしはここに来る必要なんてなくって…。
だからいつも通りツヨシの家に一緒に行って…それでDVD見ていっぱいキスして…それでいいのに。
なんでよ。
なんでよりによって今日なんだろう…
一人でモヤモヤしている気がしたんだ。
だからそう言おうとした。
そう言わないとダメだって…
『ツヨシ…』
「ん?」
バタンってドアが開いて、この倉庫の一番奥にある大きな扉から出てきた二人を見てドクンっと心臓が大きく音を立てた。
勿論学校で和也くんには毎日会っていた。
だけど、あの日以降一度も目を合わせることがなければ、話すこともなくて。
わたしの髪の色もツヨシの髪の色も本来の黒に戻したし、oneとの関わりがあったことすら忘れていたぐらいで。
視線を奪われたわたしは、仲良く歩いてくる二人を見て胸がギュっと捕まれたみたいに痛くて。
自然に和也くんの腕に絡みつくゆきみは、あの夏と全く変わっていない赤い髪で。
勿論和也くんも、そして拓真も同じ色だった。
和也くんのバイクの所に行って、後部座席に抱き上げたゆきみをそのままギュっと抱きしめる和也くん。
愛おしそうにゆきみの頬に手を添えて見つめ合う二人はどこから見ても恋人で。
ゆきみの腕が和也くんの首にかかって、その瞬間和也くんがゆきみの腕を掴んで自分の方に引き寄せた。
偶然にもこの場所にはわたしとツヨシしかいなくて…
重なり合う二つの陰を見てしまったわたしは、どうしてか鼻の奥がグッと痛い。