■ A
『…え?』
一瞬自分の耳を疑った。
まさかって…。
でも心のどこかでは、こうなるんじゃないかって思っていた部分もあったのかもしれなくて。
『そう、なんだ…』
そう言ったわたしを見て、沙和はほんの少し悲しげに微笑んだんだ。
―――ゆきみさん、拓真さんと別れて和也さんと付き合ってるみたい…―――
沙和の口から聞けてむしろよかったなって。
いつもみたいなくだらない情報源すら分からないようなことだったらわたしは信じていないって思う。
でも、沙和がわたしに教えてくれたってことは、ミツルくんであり、oneの人からの情報なのであろうから、そこにきっと間違いはないはずで。
『大丈夫だよね?』
わたしに確認するみたいに聞く沙和に、笑顔で『うん』そう答えたんだ。
だってわたしにはツヨシがいるから。
あの夏以降、和也くんに本格的に失恋したものの、やっぱりツヨシは変わらずわたしの傍にいてくれて…
だから今はもう、わたしは列記としたツヨシの彼女であって、わたし自身ツヨシのことが大好きになっていた。
だから和也くんとゆきみが付き合った所で、わたしとツヨシの関係が変わらなければ、わたしのツヨシへの愛も変わるわけない。
そう、変わるわけない…。