■ E
しばらくスーって和也くんが煙草を吸う音だけが聞こえて…
頭を上げられないわたしに、和也くんの小さなタメ息が届いた。
「いいから顔上げろ」
聞こえた声がさっきよりも柔らかい。
でも、顔を上げたわたしを見つめるその瞳は、鋭くてやっぱりとても怖い。
「だから髪染めたのか?」
「…はい」
「だったら分かるだろ?」
「え…?」
「どんなに一緒にしても心なんて貰えねぇって…」
切ない声だった。
雲が月を隠したせいで、和也くんの表情がわたしの位置から見えなくなった。
だから今、和也くんがどんな顔をしているのかよく分からない。
けれど、その声だけで十分に切ない。
だから何も言えなかった。
「お前にはツヨシみてぇな真っ直ぐな奴のが合ってる。おとなしくツヨシにしとけよ。ツヨシがお前に本気なことぐれぇ、見てて分かるし、ツヨシならずっと傍にいてくれる」
「………」
「俺の気持ちがあの人以外に向くことはねぇ…」
「………」
「お前見てっと錯覚する…」
「………」