■ B
「ゆきみさんっ!」
和也くんが近寄ると、和也くんの腕を掴んでその背中に回るゆきみ。
表情はあまりよく見えないけど、やっぱり悲しそうで、少なくともゆきみにとっての和也くんは、わたしにとってのツヨシと似ているんだと。
ならば、わたしごとき女に拓真も和也くんさえも交えて話をするなんて、ゆきみは許せないってこと?
でも、そんなことであんな風に取り乱すだろうか?
「違げえよ、ゆきみっ!聞けって」
「拓真はズルイっ!そうやっていつもわたしに何も教えてくれないんだからっ。わたしが何も気づいてないって思ってる?わたしが誰も心配しないって思ってる?」
「ゆきみさん聞いて!」
「和也!」
…怒鳴りちらしたのは拓真。
「俺から言う。お前はあの子連れてってやれ」
「…はい。ゆきみさん?ごめんね」
サラっと和也くんがゆきみの長い髪を撫でた。
拓真の前で堂々とゆきみに触れる和也くんは、やっぱりかっこいい。
こっちに向かって来る和也くんは、複雑そうな顔を向けていて、後ろ髪引かれているように見えた。
「行くぞ」
わたしを見もしないでそう言う和也くんは、さっきよりもずっと機嫌が悪い。
苛々しているのがオーラで分かった。
わたしがどうこうできることじゃないけれど、ゆきみの言葉行動に一喜一憂してしまうんだな…と思うと、何ともいえない気分になった。