■ A



「一応片付きました。主犯の女は、ツヨシと同じ学校の奴で、ユカリの元中の女でした。単なる女の嫉妬でした」


「そうか。無事でよかったな」




和也くんの言葉を受けて、拓真がわたしを見つめた。


優しいその目は、傍にゆきみがいるからだって。




「はい、ありがとうございました」


「女守んのは男の役目だから、気にすんな。和也ちゃんと送ってけよ」


「はい」




そう言って拓真はゆきみの待つバイク置き場まで走った。


たいした距離でもないのに、全力疾走する拓真に愛を感じてならない。


あんなに拓真に愛されているゆきみを、やっぱり羨ましく思った。



…―――のに…




微かに聞こえるゆきみの声に、顔を向けると怒った顔のゆきみが見えた。


拓真が何かを言って宥めているのが分かる。


それでもちょっとだけ取り乱すようなゆきみに、拓真は腕を掴んで引き寄せて、でも次の瞬間っ…




「和也ッ!!」




ここまで届く声で叫んだゆきみの声は、悲しそうな声だった。


わたしがここにいるって分かっているんだろう和也くん、チラっとわたしを見ると「ちょっと待ってろ」そう言って、拓真と同じ全力疾走でゆきみの所に駆けて行った。





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