■ A
「ユカリ心当たりはないの?」
「ないよ、そんなのっ!」
つい大きな声を出してしまったわたし、頭が働かなくて、真夏に身体を震えさせる恐怖に涙が溢れてくる。
沙和は、そんなわたしの手を離すまいとギュって握ってくれて…
「とにかくミツルとツヨシに言うから、それまで我慢して…大丈夫、あたし達ずっと側にいるから。ユカリのこと、一人になんてさせないから…」
「沙和ぁ…」
小さく頷いた瞬間、転がっていた携帯が音を立てた。
ビクっとして、ゆっくりと画面を見ると知らない番号で…
「出なくていい」
沙和がそう言って、ブチっと電源を切った。
シーンとする部屋に聞こえてくる足音。
ガチャっとドアを開けて姿を見せたツヨシとミツルくん。
わたしと沙和を見て「どうかしたか?」そんな質問が飛んできた。
「ミツル、これ…」
沙和がミツルくんの所に駆け寄って、その画面を見せた。
途端にミツルくんの目つきが変わって、「んだよ、これっ!」大声が部屋に響く。